第十話 アメリカトラディショナル


      

アメリカントラディショナルというデザインがアメリカでは主流です。それはクルージング艇もそうですし、デイセーラーも同様です。ちょっとクラシックな感じですが、見た目に、それ程ヘビーさを感じさせる事も無く、落ち着いた雰囲気です。

写真はアレリオン33というデイセーラー、有名なハーショフ氏デザインを踏襲し、前後にオーバーハングを設け、これもクラシック系の特徴のひとつ。これは水線長を短くするのですが、ヨットは速さだけを追求しているわけじゃ無い。この雰囲気が好きな方はアメリカに多い。アレリオンの他、モーリス、Eヨット、S&Sなんかもそうです。

とは言っても、SADRが22ありますから結構なスポーティー感があり、我々一般がセーリングをスポーツとして見ても充分なスイスイ感があると思います。アメリカのデイセーラーの主流は、このトラディショナルスタイルに水線以下やリグはモダンデザインという新旧の融合にあります。

ヨーロッパデイセーラーのモダンデザインの方が排水量は軽いし、もっと速いのですが、アメリカではそれでも尚トラディショナルデザインを維持し続けています。もちろん、アメリカにもレーサーならもっと速いのがいくらでもあるわけですが、デイセーラーに限っては今の処SADR25迄、恐らく、一般レーサーとは異なるデイセーラーに対する考え方があるのではないかと思います。

本気でレースする人には、このポテンシャルでは満足できないかもしれない。逆に、このデイセーラーでたまのレースをする一般の方々には、充分のポテンシャルがある。もちろん、日常的なデイセーリングを楽しむのが主であり、それはヨーロッパも同じですが、ヨーロッパモダンデザインのデイセーラーは、みんなSADR25以上になってきます。この辺りの考え方の違いがあります。もちろん、ヨーロッパでも、クラシック系になりますとSADRは25以下辺りです。

選択は個人の価値観によりますが、クラシック系(トラディショナル)はSADR25以下、ヨーロッパのモダン/クラシック系で25〜30、それ以上がモダンデザインというとっても解り易い分類ができます。これをもっと解り易くすると、クルージング艇は速い方で20以下、レーサークルーザーで25以下、もっとレーサー寄りのクルーザーレーサーで25〜30、レーサーは30以上という処かなと思います。


速いヨットを造る為に極端にセールを大きくする事はしません。多少はやりますが。重要なのは排水量です。クルージング艇と同じくらいのセール面積を持ちながら、排水量は軽いので、その分ポテンシャルが上がる。でも、レベルの違いはあれ、速ければ速い程に鋭敏になりますから、操作も繊細になります。それを面白いと感じる事が速いヨットを求める理由のひとつでもあります。

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