第六話 何故、ヨット?


      

ブームエンドにすっぽり人間が入っている。このヨットは一体何フィートあるんだろう。こんなにでかいヨットでも、今日の技術を持ってすれば走らせる事ができる。それが文明の利器というもの。電動だ、油圧だ、パワーアシストさえあれば、人はボタンを押す力さえあれば良い。

こういうスーパーヨットに乗ってみたいと思うのは確か。しかし、負け惜しみじゃ無いけど、自分の体と腕を使って操作する面白さは、スーパーヨットに勝るとも劣らない。否、面白さという点では遥かに上かもしれない。何故なら、走ったという結果だけが重要では無く、どういう操作をして、その時の力加減や感覚をも楽しむのが人だから。ボタンでもできるが、プロセスも結果と同じくらい重要だろう。

こういうスーパーヨットのオーナーは、他に、小さなヨットを持っていて、結局、稼働率が高いのはそっちの方という話は良く耳にする。兎角、でかいヨットは通常、我々がセーリングを楽しむというのとは別の次元での使われ方をするのではなかろうか?

セーリングはやっぱり、自分の腕と体で感じる操作を手段として、その先にあるセーリングのあらゆる面を体感して楽しむもの。これから、ロボットや人工知能の進化が見込まれるが、人は自分の頭と体を使ってチャレンジする処にある種の共感を覚える。究極の面白さは人そのものにあるのではなかろうか?



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