第七十九話 サンビームヨット


      

オーストリアのザルツブルグにサンビームヨットという造船所がある。この造船所は興味深い。元々は1800年代後期に木工職人から始め、1952年に木造艇を建造、それ以来代々受け継がれ、現在でも100%家族によって経営される造船所。つまり、外部株主による圧力を全く受ける事無く、独自の経営路線で発展してきた。

そのせいもあってか、昨今では小型艇を造らなくなってきた造船所が増える中、現在も小型艇をも造り続けている。モデルは22フィートから2フィート刻みで、22、24、26、28、30と来て、36、40、42、53迄造っている。社長曰く、小型艇は外せないとか。もちろん、現在はFRP製。

さらに見ると、コンセプトはラグジュアリースポーツクルーザー、クルージング艇でもセーリング重視というのが気に入った。でも、良く見るとモデルによって使い分けてる。42フィートと53フィートは、より外洋ロングクルージングを意識して、センターコクピットとし広いアフトキャビンを確保している。長い旅ならではの考え方だと思われる。

それ以下のサイズでは一般クルージング艇には無いスポーティーさを持たせている。ヨットにとってセーリングは重要な要素、同感であります。ショートハンド、シングル、カスタム性(プロダクション艇です)、それに長持ちを謳っている。

昔は買い替えの度にサイズアップが常識だった。今から思えば、それはまだ歴史が浅かったせいではないか?長い歴史を持つようになると、サイズ感も変わってくる。例えば、若い時は小さなヨットで始め、子供が生まれ、成長し、それに合わせてサイズアップもあるだろう。しかし、子供達が独立して、自分達も年齢を重ね、再び、小型艇なんかに戻っていく。そういうライフサイクルを考慮している。

これから、いくつかのモデルについて見ていきたいと思います。サンビームのヨットに対する考え方がヨットに現れている。もし、外部株主の影響があったなら、小型艇なんか造っていなかったかもしれない。最近では簡単に会社ごと売買される時代、こういう造船所で、ここまで発展してきた造船所も珍しい。

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