第四話 アレリオン28というデイセーラー



      
このヨットがデビューした時は、少しオーバーに言えば衝撃的でした。キャビン拡大全盛時代に、その流れとは逆行したデザインだったからです。キャビンはシンプル、狭い、天井も低い。それにライフラインが無かった。今は見慣れた感もありますが、当時はちょっとビックリ。でも、個人的には、これからはこれだなと感じた次第です。

シングルハンド仕様、速さ、操作のし易さ、姿形の美しさ、シンプルな内装、キャビンにはソファーとバウにベッド、それにトイレしか無かった。ギャレー無し、清水無し(オプション)。冷蔵庫に代わって、入口のステップ兼用のアイスボックスがひとつ。それだけです。クルージング艇とは真逆、でも、だからと言ってレーサーでも無かった。ヨットに対する考え方、セーリングに対する見方が違っていたわけです。

その後、このヨットがアメリカで広く受け入れられていくに連れて、それを見た他の造船所も、デイセーラーを建造し始める。もちろん、その後、もっと速いのが出てくるのは当然という事になります。それでアレリオン28もデイセーラー群の中では速い方では無くなった。でも、今だにこのヨットの人気は高いんです。

これはセーリングはスピードだけでは無いという事を意味すると思います。別にレースが主体じゃない。速いのは確かに面白いけど、それに引き換えて差し出すものもある。このヨットのセーリングには滑らかさを感じます。感性の問題だろうと思います。微風から強風まである中で、どこにバランスを取るかだと思います。今のデイセーラージャンルで言うと、相当速いのが出てきていますから、それに比べると、アレリオン28は強風寄りのバランスだろうと思えます。微風では少し重さを感じるかもしれません。ならば、ジェネカーでも対応すれば気持ち良くなる。デイセーラーはレーサーとは違います。

1990年代にデビューしたアレリオン28、当時から、現代のバキューム工法で建造されてきた。水線から上はクラシックな様相を醸し出し、リグや水線以下はモダンなデザイン。その後のデイセーラーのクラシック系デザインはみんなこれに習っています。

写真はアレリオン28の内装。シンクはオプションです。一番下に少し見えるチークのステップ、これはアイスボックスにチークを貼ったものです。シンプルですが、デイセーラーでは十分ではないかと思います。



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