第三十話 一芸


      


セーリングって芸みたいなもので、誰でもやるのはやれる。ただ、詳しいか詳しくないか、上手いか下手かの違いに過ぎない。下手でもそれで自分が楽しめているうちは良いけど、そのうちつまらなくなるだろうから、じゃあここは一発奮起して、一芸に秀でてみようかと思う。

幸か不幸か、ヨット人口は少ないので、全人口でセーリングできる人は少ない。ましてそれに秀でている人はもっと少ない。だから、これは、ちょっと上手くなるだけでもたいしたもんであります。どうせ時間を費やすなら、一芸に秀でてみようか。

乗れるだけでも飲み屋でちょっとぐらいは自慢にできる。それ以上は自己満足の世界かもしれないが、でも、何かに秀でるのは気持ちが良い。上手い奴はセール上げるだけでもスムースだし、短時間に出来るし、動きに無駄が無い。それって気が付く人は気が付く。何しろ、自分が気が付く。俺って、結構やるなという感じになれれば、面白さも倍増。

歌がうまい人、楽器が弾ける人、知識が豊富な人、スポーツが上手い人、いろいろ居るけど、ヨットに詳しく、セーリングが上手い人というのも悪く無い。ヨットやボートはお金持ちの印象だが、それを本当に自分の物にして、乗りこなせる人は少ない。乗りこなして、それを楽しんでる人には心の豊かさが根底にある。
どう楽しむかは、その場の楽しさ、面白さだけでは無く、長い年月に積み重ねられていく心に沈着する豊かさが雲泥の差になっていく。面倒くさい事、難しい事、多くが避けるこれらの事に挑戦すると、ちゃんと見返りもある。

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