第十四話 セルフタッキングジブ



      
デイセーラーには当たり前の装備ですが、最近ではクルージング艇にも採用されるようになってきました。このシステム自体はかなり前からありましたが、どういうわけかあまり採用されてこなかった。セールエリアが小さくなるからでしょうね。昔は、大きなジェノアが当たり前でしたから。つまり、メインが小さかった。小さなメインに小さなジブというわけにはいきません。

しかし、デイセーラーにセルフタッキングジブが標準として採用され、当然、小さなジブ前提ですから、メインセールを大きく取る専用のデザインがなされています。それはマスト位置は少し前に移動し、マストからフォアステーまでの距離は少し短くなり、その代わりブームの長さの方が長い。いわゆるJよりEの方が長い。従来のデザインではその逆でした。

やがて、レーサーにおいても、セルフタッキングジブとまでは言わないものの、ノンオーバーラップジブが採用されるようになり、大きなメインセールとのコンビネーションとなっていきます。この考え方は、大きなメインとジェネカーとの組み合わせによって、ダウンウィンドではより大きなセール面積を展開できる。つまり、ダウンウィンドによりスピードの可能性を見たという事になると思います。上りスピードについては、前に書きました通り限界があります。

セルフタッキングジブでは、上り角度を落として行った時、シートのリード位置の調整ができませんから、それより、より上り用としての性格が強くなり、もっとジェネカーやコードゼロ等を積極的に使うセーリングになってきたと思います。その大きくなったメインセール、考えてみれば、ブームがありますのでジェノアよりコントロール範囲がより大きい。そういう事も考えてのセルフタッキングジブではないかと思います。

シングルで走る時、コントロール性の低いジブが大きいより、コントロール性の高いメインを大きくした方が面白い。舵を握って、もう片手でセールコントロール、しかも、セール面積は大きいのでより効果的です。メインにはブームがあって、バングがあって、トラベラーがあって、カニンガムがある。もちろん、それらを操作するかしないかも自由です。でも、操作をすればそれなりのセーリングも味わえる。それに、ジブはある程度はほっといたって構わないかもしれない。乗り手の自由です。ジブよりメインの方が面白い。



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