第三十話 船体剛性の重要性



      
中島悟さんという人、御存知でしょうか? 御記憶の方も多いと思いますが、彼はかつてF1のドライバーでした。もう昔ですが、彼が市販の車をいくつもテストドライブした事があります。その目的は車体の剛性を見る事でした。彼曰く、剛性の高いボディーを持つ車とそうで無い車、そのスピードポテンシャルには関係無く、剛性の低い車はボディーがぐにゃりと曲がって気持ち悪いというものでした。もちろん、カーブを曲がるときの性能も違ってくる。一般の我々は、そんな事に気付かず、何の問題も無くドライブしています。

さて、デイセーラーにとって何故船体剛性が重要か? そこまで必要か? と思われるかもしれませんが、誰もがデイセーラーを走らせると、自然にセーリングに意識が向かいます。少なくとも、クルージング艇より多くの意識がセーリングに注がれると思います。それはちょうど、スポーツカーに乗った時の気分が違ってくるのと同じだろうと思います。すると、より多くを必然的に感じるようになります。

それを敢えて意識して、セーリングにさらに注意を向けていきますと、自分の感覚が自然に洗練されていきます。その結果、そのヨットの船体剛性の高さが感じられてくるようになる。ボディーの柔らかさが感じられたり、逆に、剛性が高いとカチッとした感じや、セーリングの滑らかさが感じられるようになり、これが気持ち良い。

つまり、セーリングに意識を向けて走り続けますと、そういう感性が自然に洗練されて、そのヨットのスピードポテンシャルとは無関係に、ボディーから来るセーリングを感じるようになる。ですから、セーリングを軸としたデイセーラーでは、スピードポテンシャルも重要ですが、船体剛性も重要になってくる。

ジャンルを問わず、全てのヨットに船体剛性は高い方が良いと思いますが、でも、気が付かないなら、それほどでも無い。でも、デイセーラーはセーリングが軸ですから、ちゃんと乗り続ければ、誰もが気が付くようになります。滑らかさって実に気持ちが良いものです。

これに最初に気が付いたのは、アレリオン28のセーリングです。特別に速いスピードで走っていたわけでも無くかったのですが、もちろん、ヨットのコンディションは良くメインテナンスされていて、その普通のセーリングに実に滑らかさを感じました。これって何? と最初は思いましたが、全ては船体剛性から来るものでした。

ある方、普段は別のヨットに乗られていましたが、初めてアレリオンに招いた時、すぐに気が付かれました。その時、このヨット高いでしょう? と聞かれました。何故ですか? セーリングの質が違うと言われました。これは船体剛性なんですね。だから船体剛性は重要です。デイセーラーでは、軽量化を図りつつ、剛性を高めています。そこが重要です。

という事で、ヨット選択のポイントは、デザイン、サイズ、排水量、バラスト重量、セール面積、そして船体剛性だと思います。

        

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