第十二話 求めないスタイル



      
速く走らせて爽快な気分を味わいたいと誰もが思います。ところが、自然相手ではそうも行かない。吹くか、吹かないか、その時の風次第であります。これを何ともどかしい事かと思うとセーリングを楽しむ事はできません。確かにスピードが出ると面白い。しかし、風を制御できないという特性を考えると、あらゆる風での、それぞれの走りを味わうという事がセーリング本来のスタイルではなかろうか。

快走を味わった。それをもう一度と考えずに、今日の風はどうかな? 今日のセーリングはどうかな? とあくまで風に対しては受け身的でありながら、その今日の風の状態において最高を目指すという積極性も必要になる。

これが良いか悪いかは別として、これぞセーリングならではの特性ではないでしょうか? 環境状態がこれ程影響を与えるスポーツはありません。敢えてそれを選んでいるわけです。そこに面白さを見出すのがセーリングだろうと思います。

自然に対して誰もが謙虚にならざるを得ません。風に文句を言っても仕方がない。その中でどれだけの事ができるか? そういうスポーツです。 そう意識してセーリングすると、弱い風にはそれなりの、中風なら、強風なら、それなりのセーリングがあり、そのセーリングのそれぞれの味わいを愛でる必要がある。

自分の腕には積極的ではあるものの、その結果に対しては謙虚に受け止め、それを味わいのひとつとして受け入れる事ができれば、本当は、総合的に考えるとこれ以上に面白い事は無いのかもしれません。だから、ある特定のセーリングは求めない。そういうスタイルです。そうすると、微軽風にさえ面白さを見いだせれば、全てにおいて面白く味わえるようになれるのかもしれません。だったら、今度微軽風に出会ったら、そう意識してみようと思います。

        

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