第六十八話 スピードに対する考え方



      
デイセーラーにも多くのヨットが出てきますと、自ずとある傾向が生まれてきます。それは、スピードに対する考え方にあります。あるデイセーラー群はスピードをさらに追求していきます。どんどん進化していきます。デイセーラーとしてのコンセプトに加えて、ワンデザインレースもその視野に入っています。このヨット群はむしろ、その傾向が強くなりつつあり、排水量はどんどん軽くなり、セールは大きくなっていきます。元々モダンデザインはスピードを狙ったデイセーラーですから、その進化はさらなるスピードの追求になってしかるべきとも思います。

一方、スピードに対してはある程度までは求めるが、そこまでは求めない派、クラシックデザインなんかはそうですし、モダン/クラシックもそうでしょう。スピードを楽しみつつ、充分スポーティーだし、乗り味を楽しみ、自在感を楽しみ、シングルでのセーリングや、友人とのセーリングを気軽に楽しむ。

デイセーラーを分けるのはこのスピードに対する考え方になるかと思います。この二つの違いは、今後、もっと明確になって行くのではないかと推測します。これをSADRで分けるとしたら、SADR30以下と以上かなと思います。一般的にはスピードを求めてもSADR25前後もあれば、かなりスポーティですし、充分楽しめると思います。20前後でもかなり面白いと思います。そして、スピード追求デイセーラーは、30を遥かに超えていきます。今後、35前後から40前後になっていくと思います。人のスピードに対する飽くなき探求は留まる処を知りません。

そして、一方では、スピードばかりでは無く、乗り味を求めていく。フィーリング重視派と言えるかもしれません。スピード派とフィーリング派かな? これが今後のデイセーラーに対する考え方の違いを生み出していくのではないかと思います。

100年前にデザインされ、建造されたヨットが今でも造られる。そして、今のデザインでも、様々な最新技術や考え方を織り込んでも、クラシックなテイストを残す傾向にあるヨットは多い。それが何を意味するものかと考えますと、やはり、セーリングはフィーリングを重視する人が多いという事になります。

レーサーはスピード、クルージングだって、速ければ行動範囲が広くなるという考え方もありますが、でも、クルージングとしての機能は必要になります。この点、デイセーラーだったら、スピード追求でも良いし、フィーリング追求でも良いし、何にでもなれる。だから、自分のセーリングを追求できます。だから、SADRで言えば、15から40ぐらいまであって幅広い。セーリングのバリエーションで言えば、他にこんなジャンルのヨットはありません。だからこそ、デイセーラーはセーリングを楽しむ為にあるヨットだと言えます。いろんなセーリングを選択できるわけです。

でなきゃ、最新技術を駆使してまで、こんなクラシックなデザインなんかしません。前後の長いオーバーハングは明らかに水線長を短くします。でも、現代の技術でスポーティーなスピードを楽しめるし、クラシックなテイストも味わえる。これがデイセーラーの面白い処です。写真はイーグル36。SADR23.4で、結構なスポーティー性を兼ね備えています。さらに、その下の写真はブレンタ氏の最新デザインB33で、SADR35です。

デイセーラーの台頭は世界のヨット界に新しいセーリングを持ち込みました。これまでのレースやクルージング以外に、セーリングそのもののスピードやフィーリングという純粋なセーリングを楽しむという手法です。それは人間の感覚に直接訴えかけるというものだと思います。

イーグル 36


B 33
        

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