第七十九話 セーリングは難しいのか?



      
ボートオーナーに尋ねてみますと、ヨットは難しそうとか、また、忙しいからヨットみたいにのんびりしてられない、だから、速く走れるボートの方が良いとか言われる事があります。釣り目的ならボートが良い。これは明白です。実は、クルージング目的なら、足の速いボートは手っ取り早いので、これも考え様によっては良いとも思います。

ただ、忙しいからボートという理由には、反論があります。忙しいなら、いくらボートでも行ける範囲は知れたもの。その範囲で何をするのか? どこかに上陸して飯を食う? たまには良いでしょうが。結局、する事無くなっているボートがたくさんあります。でも、デイセーリングだったら、短時間で、スリリングなセーリングをする事もできる。奥深さに挑戦する事もできます。結局、灯台下暗しで、面白さは目の前にある。だから、忙しいならセーリングの方が面白いと思います。

これは一般ヨットにも言える事で、なかなかセーリングを真剣にされる方は少ない。それは何故か? そういうスポーツセーリングは、レーサーがやるものだという思い込みのせいではなかろうか? セーリングはレーサーの為だけにあるわけではありません。普通に楽しんで良い。それを示したのが、今日のデイセーラーだと思います。セーリングは競争の為だけにあるわけでは無い。セーリング自体をもっと楽しもうという提言です。

ヨットは難しそうだという点について言いますと、確かに、全てを理解して、全てを使えないとセーリングできないのなら、そうかもしれませんが、それは相当な上級レベルの話です。でも、いきなり上級セーリングができる人は居ない。でも、想像する時、いきなり全部を考えてしまうんではないでしょうか? それだけヨットの事が知られていないという事かもしれません。

例えば、野球やるのに、ピッチャーだとしたら、ストレートはおろか、カーブだ、スライダーだ、フォークだと、全ての球種を投げれないとできないと思う人は居ません。セーリングだって同じです。ボールさえ投げれればできる。それと同じなんですがね〜。

草野球でも上手くなって行った方が面白くなります。ピッチャーがストレート以外に、カーブを投げれるようになると面白くなります。それと同じ事で、操作をひとつ増やす事は、ピッチャーがカーブを投げれる様になるのと同じ事です。何が面白いって、球種が増えた事で、どのタイミングでカーブを投げるかとか頭で考えます。それが面白くなる要因で、そのうえで三振なんか取れると気分が良くなる。

ジブシートとメインシートに、もうひとつ操作を加える事がそれに当たります。実は、操作自体は簡単な事です。ロープを引くか出すかの作業だけなんですから。重要な事は、その操作の意味を理解して、その変化を感じ取る事です。だから、スポーツセーリングは頭脳と感性のスポーツだと思う次第です。

これで操作の質が上がります。操作はロープ操作だけなんですが、頭脳がその意味を理解し、感覚的に違いも分かってくる。よって、それが適切に行われればセーリングが上質になる。実際の走りも違っていきます。それをひとつづつこなしながら、上達していこうという話です。そういう意味では難しい。でも、だからこそ面白いんであります。

        

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