第六十六話 上質のセーリング



      
セーリングに上手くなったら何が良いのか? これはあらゆる事と同じで、歌が上手かったら、楽器演奏が上手かったら、ゴルフが上手かったら、スキーが上手かったら、知識が豊富だったら、お洒落が上手だったら、キリが無いくらいに思い浮かべる事ができます。また、今日の飯が美味かったら、昨日見た映画が面白かったら、といろいろあって、そして、全てに共通するのが、”良い気分” という事だと思います。

我々はただ生きるだけでは無く、この良い気分を味わいたい。それが我々の目的でもある。動物なら生きる事が目的になるかもしれないが、人間は、その上に良い気分を味わいたいと希望を持つ。それが人生の良し悪し。その良し悪しはいろんな形があり、いろんな手段があります。上手い、美味しい、美しい、すごい、我々を良い気分にしてくれる要素はたくさんあります。

そのいろいろある手段の中で、セーリングに興味がわいてきたら、ただセーリングするだけでは無く、そこから、良い気分を獲得したい。それが、”上質のセーリング” だと思います。その為には、楽器を演奏する様に、上手くなる事が必要になります。 その上手くなるプロセスは、俗にいう練習という事になるわけですが、セーリングに関しては、有難い事に、練習を遊びながら、楽しみながら、上達できるという事です。

知識が増えて、技術も上がって、そうすると、自分の感性も同時に高まっていきます。この三つは同時進行です。すると、ただ真っ直ぐ走っている時でさえ、上手い人は、波や風があっても真っ直ぐ走らせる事ができ、しかも、その時の微妙な波や風の変化さえも感知できており、そのうえで、微妙な舵さばきで、直進させている。つまり、より多くを感知して、より上手く操作できる。そのセーリングは滑らかです。それを感じる事ができます。これは”良い気分”なのではないでしょうか? ただの直進でさえ、こうですから、セーリングはいろんな要素があって、良い気分が、ここあそことたくさんあります。それを発見していく事です。だから、少しでも上手くなって、そのより良い質のセーリングを味わって頂きたいと思います。

また、技術的に上手くなる事だけが、良い気分では無く、他にもあります。自分が気に入った美しいヨット、そのヨットの操作性、品質なんかも、良い気分を得る為の道具になります。ただ、波と風はコントロールできません。だからこそ、ヨットと自分の腕が必要になります。だからこそ、”良い気分” を獲得する事ができる様になります。

     
   

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