第二十九話 日本人気質(2)

引退して、毎日が日曜日になっても、他の仕事したり、近所の世話したり、いろいろ皆さん忙しい。そうなると、長期のクルージング、一ヶ月以上とか、そういうのには出にくくなります。ところが、問題は忙しいからという理由だけでは無いように思えます。 一週間や二週間は良い。でも、それが三週間、四週間、五週間と長くなると、何だか落ち着かなくなる。それは多分、日本人の社会に対する帰属性の強さなのではないかと思います。

例えば、生活するに充分な財産があり、仕事する必要が無いとして、多分、アメリカ人は、何ヶ月もクルージングするに躊躇は無いと思います。早期引退は彼らの夢ですから。しかし、日本人は、何ヶ月も遊んで回る事に、経済的にも社会的にも何の問題も無いはずですが、でも、どうも長くなればなる程、居心地が悪くなる。社会に属していないというような不安感、宙ブラリの不安が出てくるのではなかろうか?社会に対する帰属意識の強さではなかろうか?

日本の年間休日は少なくはありません。合計すれば結構あります。でも、飛び飛びです。それが日本人気質に合っているのかもしれません。という事は、長期のクルージングは日本人に合わないのではなかろうか? と疑問に感じます。ですから、 長期では無いクルージングの方が安心できるのではなかろうか? それで、ひとつの方法は、例えば、一週間でどこかに行って、そこにヨットを置いて、一旦戻る。まあ、二週間でも良いんですが、時々戻る事です。戻る事で、社会とのつながりを確認します。まあ、方法はあるわけですが、でも、敢えて言えば、長期クルージングは、日本人向きでは無い。例外もあります。でも、一般的にです。

さて、次はレース、これは日本人も競争意識は高いですから、楽しめます。でも、本格的にやるとなると、物凄く大変なので、そこまでやる方は多くない。でも、やれば面白い。それで、一般的には、ローカルのお祭り的レースに参加する。これは実際、多くの方々が楽しまれています。

しかし、問題は、クルージングにしても、レースにしても、頻繁では無く、これらは各人の日常的な使い方では無く、たまのイベントであるという事です。では、日常にはどうやってヨットを楽しんだら良いのか?

我々も、そろそろ、自分達に合うスタイルを持った方が良いと思います。これまで、西洋の文化を取り入れては、そのままでは無く、自分達流にアレンジしてきました。ヨットも同じで、そろそろ、自分流をアレンジした方が良いのではと感じます。日本人にとって居心地の良い、基軸となるスタイルを創る必要があります。

欧米人の様な別荘は無い。これは既に証明されています。クルージングはあるが、長期は無い。
レースは有る。でも、たまのお祭りレース。それで、私が思う、最も日本人に合うスタイルはセーリングだと思うわけです。もちろんお察しの通りです。

日本人は勤勉です。学ぶ事に面白さを感じれる民族です。面白さを感じたら、追求していく国民性だと思います。それに、感覚的に繊細です。ですから、デイセーリングは日本人に合うスタイルだと思います。散歩セーリングからスポーツセーリングです。ただ、個人主義はあまり強く無い。だからこそ社会への帰属性が強いんだろうと思いますが、単独のシングルハンドに対する若干の抵抗もあるかもしれません。でも、長期では無いわけですから、デイセーリングなので、そんなに抵抗は強く無いと思います。それに、シングルハンドセーリングだけに固執するわけでは無く、時にダブルハンドでも、時にゲストを招いてのピクニックも、ローカルレースもショートクルージングも行ける。ただ、基軸を何にするかの問題であり、それは、別荘じゃない。クルージングじゃない。セーリングでしょうと思う次第です。

このデイセーリングを満喫するにあたっては、その為にデザインされ、建造されたデイセーラーが最適だと思って、約20年前ぐらいに取り扱いを開始しました。なかなか順調とは言い難いですが、それでも、徐々には受け入れられてきました。もちろん、デイセーラーでなければならないわけではありません。でも、意識をデイセーリングに置かれたらどうかと思います。

近所に関しては、デイセーラーで全部できます。クルージングもできます。ただ、主軸はセーリングにある。本当は日本から出てきて欲しかったコンセプトです。日常的にセーリングを気軽に楽しむ。徐々に慣れて、セーリングの知識を増やして、操作も上手くなっていく。世界を股にかけるセーリングはしなくても、セーリングに関しては、日本人はセーリング好きだ。そういう評価になっても良いかと思います。日本人って、ピクニックにしても、ただ、毎回ゆったりしているだけでは満足できないので、ピクニックそのものが少なくなる傾向もあるように思います。欧米人の様に、何もしないで良いというわけには行きません。ですから、セーリングを軸にしておけば、また話しは違ってきます。

それで、散歩セーリングから初めて、徐々に自分のペースで進化していく事を軸にする事をお勧めしています。それなら、ピクニックも、ローカルレースも、宴会も、クルージングも、全部楽しめるのではないかと思います。いかがでしょう? 基軸をクルージングからセーリングにしては如何でしょうという話しです。

以前、緊張と緩和の話しを書きました。物事を長く楽しむには、この二つが必要だろうと思います。緊張は集中と言い換えても良いです。つまり、日常にセーリングして集中力を発揮し、その緊張の面白さを味わう。本当はこの中にも緊張と緩和があるんですが、そのセーリング全体を緊張とすると、その他のピクニック等が緩和として楽しむ事ができると思います。そして、思いますに、楽しさを求めて、緩和を基軸に考えますと、そのうちつまらなく思えてくる。緊張あってこそ、緩和が活きると思います。

という事で、約20年程前から、セーリングをと主張してきました。さて、実際は、あまり変わっていないかな〜? でも、ちょっとはデイセーラーも増えてきています。

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