第十三話 最もハッピーな二日間

あるアメリカの雑誌にこんな事が書かれていました。最もハッピーな二日間、一日は、ヨットを手に入れた時、そして、もうひとつはそのヨットを手放した時だそうです。ヨットを手に入れた時のハッピーは当然ですが、手放した時、それで、様々な義務から開放される、例えば、マリーナの費用、メインテナンス、クルー等々だそうです。

じゃあ、買った時と売った時の間はどうなんでしょう? アメリカでは、別荘的にヨットを使う人達が多い。だから、でっかいキャビンが必要なのです。これが面白く無いといけないはずで、この為に手に入れたわけですから。毎週の様に、マリーナに行って、週末はそこで過ごす。そうじゃないと、せっかく買ったから、いろんな費用を考えたらもったいないし。でも、それがいけません。毎週、毎週、同じ処に行く。しかも、マリーナ環境に変化は無い。もちろん、マリーナの設備や周辺の施設もリゾート的で充実もしていた。でも、何だか、義務というか、せっかくだしとか。それで、他の事もできなくなる。そうやって、何年も過ぎていく。

日本ではここまではありません。ほったらかしが多いから。何ヶ月もオーナーが来ないヨットは多い。アメリカでは別荘的にヨットを使う人達は多い。でも、それも何だか、様相が変わってきているのかもしれません。せっかくのでっかいキャビンに、エアコンまであって、快適そのもの。それに憧れたものの、何だか、最近は様子が違う。毎週義務的に行くなんて、面白いはずが無い。

だから、デイセーラーが増えてきている要因がここにあるのかもしれません。何故なら、デイセーラーだったら気楽になれる。気持ちが緩やかになります。そして、簡単にセーリングを満喫できる。メインテナンスも軽減されるし、クルーも要らないし、ヨットと気軽な関係を持つと、義務感は無くなり、別に、毎週じゃなくても良いし、他の事もできるし、セーリングは濃厚だし、面白い。それに、クルージングだってできる。

ハッピーな二日間なんて言葉が出てきた事で、相当、そういう空気が蔓延しているのではないかと思います。でも、そういう言葉が出てきたという事は、次の解決策の模索が始まった事でもあります。今後、多分、デイセーラーはもっともっと増えて行くだろうなと思います。

日本でも、ヨットと気楽な関係を創って頂きたいと思います。せっかくあるから、せっかく買ったから、費用もかかってるし、そういう義務的な事では無く、気軽になれると、案外、その方が楽しめるようになるのではなかろうか? ちょっと行って、セーリングして、帰りにドライブして、どこかで食事して、どうにでも出来ます。その軽やかさが良い。

マリーナに行って、時化てたら、がっかりしないで、じゃあ、別な処に遊びに行く。セーリングはまた今度、その程度が良い。でも、セーリングする時は本気でする。濃厚に堪能する。2〜3時間程度なんですから、どこかにスポーツしに行くようなもんです。しかし、このメリハリが、堪能するコツではなかろうか?

のんびりしようなんて考えると、そのうち飽きてくる。のんびりは、ほんのたまにだから、のんびりできます。セーリングを本気でやると、そのメリハリで、たまの、のんびりが活きてくる。どちらにしても、ヨットと気軽な関係を持つ事が重要だと思います。それで、本気でセーリングしますと、セーリングが面白くなります。さらに、デイセーラーのキャビンは広くはないが、1泊や2泊のクルージングには充分なスペースはあります。だから、ウィークエンダーとも言われる。つまり、そういうメリハリもつけられる。

ヨット先進国において、最もハッピーな二日間なんて言葉が出てきた事は、その流れが変わろうとしている事だと思います。ヨットを別荘にして、本当に楽しいか? その別荘で、ちょっとそのあたりをセーリングして面白いのか? やっぱり、主軸はセーリングそのものか、或は旅かレース、このあたりに持ってきた方が面白いのではなかろうか?

そして、旅には旅の条件があり、レースにはレースの条件があります。そこいくと、セーリングにも条件はありますが、最も手軽でありながら、ディープなのであります。だから、デイセーラーが広がる理由がここにあります。セーリングしてきたからこそ、もし、引退後、遠くにクルージングに行きたいなら、それも容易になる。もちろん、セーリングをもっと求めても良い。セーリングを求めてスポーツするからこそ、ピクニックセーリングも活きてくる。

デイセーラーのコンセプトは、セーリングを主軸にして、その周辺にピクニックやクルージングを散りばめる。そしてレースだって楽しめる。要は主軸を何にするかだと思います。

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