第七十五話  リズム

デイセーラーである限り、パフォーマンスは重要です。しかし、スポーツ度が高ければ高い程良いとは言えないと思います。レーサーなら、速い方が良い。とは言っても、レースで勝つ為には、レーティング上有利になる要因をもって、スピードを抑える事になる方を選択する事もあります。レーサーは相対的にみんな速いのですが、でも、勝つ事が一番の狙いですから。

さて、デイセーラーはと言いますと、パフォーマンスとそのフィーリングですから、より高いスポーツ度が、必ずしもより良いフィーリングをもたらすとは限りません。人によって感じ方が違います。
従って、リズムとは、そのヨットのパフォーマンスと乗り手のフィーリングにある。

どんなフィーリングが自分にとってグッドなのか? 機敏なのが良いとしても、人によっては機敏過ぎるとグッドになるどころか、緊張ばかりになるかもしれません。或は、その機敏性を楽しめる人も居ます。ですから、求める処とのバランスが重要になると思います。

アレリオン28のスポーツ度は18ですから、今日のデイセーラーとしては高い方ではありません。しかし、今でも、デイセーラーの中では最も売れ続けているヨットです。それは多分、気楽なセーリングから緊張したセーリングまで、そのバランスが丁度中間あたりにあるからではないかと思います。多くの方々が、アレリオン28にそういうバランスを見たのではないかと思います。

もう少し、スポーツ度を上げれば、もっとスイスイ走れます。当然、気分も違ってきます。しかし、一方では、強風も当然あるわけですから、その強風時にはもっと緊張感は高まる。でも、腕に自信のある方にとっては、その緊張感を楽しめます。中風以下ならそうは無いが、強風になればなる程、違ってきます。それをどこまで楽しめるか、楽しもうと思うか? もちろん、強風になればリーフして対応できます。

微軽風から強風まで、どんなセーリングで、どんな対応をして、どんなフィーリングを得るか?その好みはどこにあるか?これもスポーツ度で見て良いんじゃないかと思います。

全てはバランスです。最高速度300Kmのフェラーリが、誰にとっても楽しめるスポーツカーとは思えません。ヨットとそのパフォーマンスと、そして、自分自身の気持ちのバランスになると思います。もちろん、腕を上げる事ができるし、腕が上がれば気持ちも変わるかもしれません。それでも、必ずしもスポーツ度が高い方が良いとは言い切れないと思います。

多分、人には自分が落ち着く処があるのではないかと思います。好きなテンポとか、好きなリズムとか、これらは理屈ではありませんし、各人が独自のリズムを持っているかと思います。曲で言うなら、アップテンポが好きな人、或は、ゆっくりしたバラード系が好きな人、これらは理屈抜きですね。

好きなリズムで、セーリングを楽しむ。速さだけでは無く、好きなリズム。その為に微軽風用セールを展開するかもしれないし、リーフをするかもしれない。

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