第三十六話 気軽さ

さっと出して、スイスイ走ってくる。そんな気軽さこそがデイセーラーにはあります。大きなヨットは豪快かもしれない、大人数乗れるかもしれない、でも、手間がかかる。気持ちの軽さは全然違います。

先日、今時の45フィートのヨットに接する機会があったのですが、兎に角でかい。デッキも非常に高く、乗り降りはステップ無しでは大変だな〜。でも、その分、メインサロンは非常に広い。ヨットの中である事を忘れてしまいそうです。このヨットには、ボタン一つで横歩きできる装備がついてます。だから理屈では、簡単操作なのです。でも、気軽さはどうでしょうか?

大きなヨットには大きなヨットである事のメリットがあります。それが使う側の使用目的に合えば良いわけです。これだけ大きいと、理屈とは別にシングルで乗るには寂しすぎるかな〜? それにシングルでそんなに気軽に出せるかな〜という気がします。まあ、シングル前提では無いと思いますが。

デイセーラーはパフォーマンスの良さもありますが、デッキは低いし、乗り降りは楽、それにスラスターなんかは無いですが、サイズの割にボリュームが小さいので圧倒感も無く、操作はし易いし、舵効きも良いので、出し入れも楽です。そして、風圧面積も小さいし、当然ながら重心も低い。

自宅にもしでっかいキャンピングカーとスポーツカーがあるとしたら、どちらも一人で走る事ができますが、そのニュアンスと言いますか、気軽さは違うでしょう。それと同じです。長期の旅行に行くならキャンピングカーの方が良い。でも、近場を走るにはスポーツカーの方が気楽です。デイセーラーは、まさしく、このスポーツカーにあたります。

ふたつ持てれば使い分ける事ができますが、そうもいかないのがヨットです。どっちが良いかは用途に寄りますが、日常を考えますと、デイセーラーの気軽さはやっぱり使えるな〜と思います。
面白さが違うのではないかと思います。

近くの用事にキャンピングカーを使う事は無いでしょう。やっぱり、ちょっとした旅行にならないと動かせない。稼働率を考えますと、ヨットと同じかな? 車は足替わりに使う事が多く、移動手段ですが、ヨットの場合は足替わりという事は無く、目的はセーリングにあるか、或は、クルージングだったら移動手段になるかもしれない。

使い分ける為に二艇を持つ事ができない以上、どちらに重きを置くか? そこが思案のしどころであります。近場の気軽さを取るか、遠方の旅を取るか?多くの方々が、遠方の旅を取られてきました。しかし、キャンピングカーと同じように稼働率は低い。かと言って、別荘的使い方も今一。そうなると、近場の気軽さは重要な要素ではないでしょうか?

そんな割り切りをできる方々が徐々にではありますが、増えてまいりました。世界的にはかなり増えてます。自分とヨットとの関わり方を、もう一度見直してみても良いのではないでしょうか?

いつでも、気軽に、一人でも、全く未経験の方を誘っても、さっと出して、セーリングを楽しめる。
大航海は無理にしても、キャビンで大人数での大宴会を開く事ができないにしても、広いキャビンを自慢できないにしても、エアコンが無くっても、この気軽さとそのパフォーマンスは面白さが違うと思うのです。

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