第86話 腰の強いヨット

俗に腰が強いという言い方があります。ヒールしても、ある程度まで、そこでぐっとこらえて
くれる。風を逃がしてやれば、セーリングは可能です。でも、腰が強いと、セールをリーフ
したりする必要性が少なくなる。という事は、強い風でもフルセールで走れるならば、それ
だけセーリングの醍醐味が増えるというものですし、極端にスタビリティーが少ないヨット
なら、醍醐味を味わう前に、セールをリーフしなければなりません。もし、クルーがたくさん
居るなら、風上に座らせて、バラスト代わりにできますので、そういう場合は微風から強風
まで対応できるので、それはそれで面白い。でも、今やクルー不足の時代、ならば、腰の
強いヨットが良いと思います。

レースをしないからと言う方が多いですが、だからと言って、セーリングはどうでも良いとい
うような考え方は持たない方が良い。住むのが目的なら別ですが。

フルセールで走り出して、風がだんだん強くなってくる。ヒール角度が大きくなります。それ
でセールはできるだけフラットにする。セールが丸くカーブを描くという事は、それだけパワー
が溜まっていますので、大きくヨットをヒールさせる事になる。それで、強風時はセールをフラ
ットにして風を流してやる。メインセールはもしあれば、フラッターを引く、アウトホールを引く、
バックステーを引く、カニンガムを引く、ジェノアの場合は、ジブトラックのリーダーの位置を
後ろに下げる。こういう一連の作業でも追いつかないなら、ジェノアを小さく巻く。次にメイン
をリーフする。

いくら、腰が強いと言っても、セールが古く、どんなに調整してもフラットにならないというヨットも
少なくありません。クルージング派の方はセールを破れるまで使えると勘違いされています。
理屈では確かに、破れるまで使えます。でも、調整できないセールを新品にかえると、こんなに
楽に乗れるのかと思われるに違いありません。

腰が強くて、あまり伸びが無いセールのコンビネーションが、快適なセーリングをもたらしてくれ
ます。デンマークのノルディックフォーク25には一切のリーフがありません。造船所に聞きます
と、一般の方々が乗る状況ではリーフする必要が無いとの返事でした。それで、具体的に、
どの程度なのかをさらに聞きますと、返事はビュフォート9まではフルセールで走れるという返事
です。この数値は風速20〜24m/sです。こんなに吹いているときにマリーナを出る人は居ない
でしょう。こんなに吹くなら、天気予報さえ確認していれば注意報が出ているはずです。という事
はリーフなど必要が無いという事です。それでも出てしまったら、ジブを降ろしなさいという事でし
た。1枚で走りなさいという返事です。この事がどんな意味を持つか、想像つきます?
強風でもリーフせずに走れるという事はいかに腰が強いか、そして安心して走れます。

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