第八十七話 セーリング考

セーリングそのものを純粋に堪能しようと考える場合、最もそれに相応しいヨットは、今日のデイセーラーだろうと思います。それゃあそうです。そういう目的でデザインされたわけですから。シングルハンド仕様である事や操作性、スタビリティー、滑らかさ等々、どう考えてもデイセーラーが最も、そういう目的には合っている。

但し、それ以外という点においては、ちょっと違ってくる。クルージングにおける性能としては、クルージング艇には勝てない。キャビンが狭い。だから、なかなか割り切れないという方もおられる。これは仕方無いとしか言い様がありませんが、使い方をじっくり考えて、キャビンを使う割合を検討して頂く事になります。

さて、クルージングでも、本格的にやるならば、習得すべき事柄は多い。今日ではGPSがあるので、ナビゲーションについては、昔よりは遥かに楽にはなったが、それでも、覚えるべき事は多い。何でも、ちゃんとやれるようになるには、習得しなければならない事が多い。大変かもしれないが、習得すればする程に、より多くを楽しめる事になるのは間違い無い。 だから、どこまでやるかでありますね。

クルージングには膨大な時間が要求される。当たり前です。旅に要する時間なんですから。しかし、セーリングだったら、一日にかかる時間は少なくて済む。クルージングはまとまった膨大な時間が必要になるから、それに比べたら、とっても気楽にできる事ではないかと思います。2〜3時間で十分楽しむ事ができる。

ただ、気楽だからセーリングというのでは勿論無いわけで、何故セーリングかと言うと、面白いからに決まっている。ただ、クルージングと同様に、セーリングをより堪能するには、より習得しなければならない。その方がより面白くなるから。

という事で、遊びながら、練習をしましょう。練習ですから、のんびりしてばかりしていては、いられません。遊びながら、練習している気持ちも持たなければ。

外国語を習得するには、単語を覚えて、文法を覚えて、それらを実践で使えるようにしなければならない。それをセーリングに当てはめるならば、それぞれの艤装の機能を覚えて、それが単語にあたって、それらの単語の組み合わせでどんな影響があるかが文法で、そして、これら全体を実践で組み合わせていく事だと思います。英語にしたって、いろんな外国の方々のアクセントや、人によって早口とかいろいろあるわけですから、それは風や波の変化と同じとも言えなくもない。だから、きれいな、ゆっくり喋る人だけと付き合うわけにも行きませんから、やっぱりいろんな状況に対応できる方が良いという事になる。

微風の時はこうする、中風はこう、強風はこう、そういうパターンを考えて、それ以上吹くなら、エンジンかけて帰る。無理しても、面白くは無いから。それぞれの風で、それぞれのセーリングのやり方を実践し、それぞれのフィーリングを味わう。快走ばかりでは無いが、いろんなセーリングを受け入れる事で、腕も上がるし、気持ち的にも、幅ができる。だから、それが総合して、セーリングの様々な妙味を自分の物にできる。

セーリング考とは、セーリングは面白いのか? そこが最初に来て、その為にはどうすれば面白くなるのかになっていく。出来るだけ、いろんな状況で面白くする事を工夫する。あるポイントのみで、面白いというのでは、年間を通しても、面白さは少ない。中風だけで面白さを考えると、微軽風と強風では面白くないという事になる。それでは、長年やるのは難しい。

だから、いろんな状況で、いろんな対応の仕方を工夫していく。面白さを想像し、創造するという事になります。それがどれだけできるかにかかっている。10年、20年の長い時間をかけて行う想像と創造であります。

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