第五十七話 アパートのような

ある人が、最近のヨットはでっかくて、キャビンはヨットというよりも、アパートのような感じがすると言われた。まさしく、そんな感じです。ある外国の雑誌によると、ヨットのキャビンをアパート造りのようにして、自宅での寛ぎ感を演出しているとあった。

誰が、ヨット内で自宅のような寛ぎ感を求めるのだろう? やっぱり欧米人か? 日本人の私としては、やはりヨットのキャビンには、ヨットらしさ、エキゾチック感があった方が良い。最近のキャビンフロアーは住宅の板張りのよう。従来からあるチーク板に白いストライプが入ったフロアーはやっぱりその方が良い。何も、ヨットと自宅と同じである必要は無いし、むしろ、ヨットらしさがあった方が良いように思える。

コクピットの床の高さとキャビンの床の高さをできるだけ近くして段差を縮める。さらにキャビンは広く、リビングルーム的、これじゃ動くアパートじゃないか? ヨットがヨットらしくある時の一種独特の雰囲気は失われる。これはまさしく、欧米人による別荘的感覚の強調かな?

すると、キャビンはリビング/ダイニングで、前後にベッドルームが二つ。そしてコクピットはベランダのようだ。まあ、これはこれで良いとしても、ヨット感が失われるのはどうも気に入らない。やはり、ヨットには特別な空間としてのイメージがあった方が、個人的には好みです。

コクピットは寛ぎの場所ではあるが、その前にセーリングをする場所、言い方を変えれば戦闘の場所であります。寛ぎももちろん良いが、戦闘するための使い易さを優先したい。

でも、世の流れはそうでは無いようです。まあ、好き好きかもしれませんが。キャビンがアパートのようになって、コクピットがベランダになると、まあ、まさしく動く別荘であります。別荘がほしかったら、陸上の別荘の方が良い。ヨットはヨットらしくエキゾチックさと、非日常的セーリングを満喫したいものです。

ヨットが別荘という感覚は、どうも馴染めない。個人的な乾燥ではありますが。あくまで乗り物としてのヨットが優先され、そのついでに寛ぎの空間もあるという感じ。それも、異種独特な雰囲気、非日常的なエキゾチック感、ヨットらしい雰囲気があった方が、たまに過ごすキャビンとしては魅力的かなと思います。

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