第七十三話 公共マリーナの行方

不況が続くとはいえ、日本は経済大国であります。その経済大国の姿というのは、一体どういう姿なのでしょうか?国民が物質的に豊かである事はもちろんですが、その経済成長を成す為には、国の基本的インフラが豊かでなければならないと思います。実際、日本では道路が整備され、高速が通り、新幹線が走り、空港や港が整備されています。やり過ぎだ、無駄だという声も聞かれはしますが、確かにそういう部分もあっただろうとは思いますが、しかし、その御蔭で経済成長もなしてきた事は事実だろうと思います。

それが、デフレによる税収減と、やり過ぎ公共投資が批判を浴び、今日、そのメインテナンスでさえも、行き届いていないような状況にきているようです。これからの日本にとって、やはりインフラは重要ですし、その国の経済の根幹を成すのではないかと思います。将来に借金を残すのかという議論もありますが(実際は国民の借金では無い)、将来に老朽化したインフラを残すのもどうかと思います。借金も残すが、それに見合うりっぱなインフラも残す。という考え方もできるのではないかと思います。インフラは国民の財産ですと考える事もできると思います。

ところで、物質的豊かさにおいて、日本は成功してきたわけですが、でも、いわゆる幸福度という面においては、そのランキングは下位に居るらしい。これは昔から言われてきた事で、その尺度たるや難しい問題ではあるのですが、でも、精神的幸福度というのが、物質面に比べて低いというのは、共通認識ではないかと思います。

という事で、国又は国民の財産であるインフラと国民の幸福度を考慮したビジョンが必要なのではなかろうか?丁度、選挙の時期なので、そんな事を考えたり。単なる思いつきで、悪しからず。

続けますと、例えば公共マリーナであります。事業仕分けによって苦しい立場に立たされる公共施設、なかでもマリーナは無駄の象徴のようにも見えます。贅沢だ、金持ちだけの遊びだ、そこに庶民の税金を使うなんて・・・・・。 公共マリーナは立場がありません。

しかし、日本はこれだけ小さな国であるのに、世界でこの間まで第二位のGDPを持っていました。これは驚異的であります。それだけの力がある事は事実だろうと思います。問題は方向性、その力の発揮の仕方にあると思います。

これまではまあ仕方無い。戦後の何も無い処から出発して、何しろ成長が必要でした。成長一辺倒でやってきました。急に変える事はできません。しかし、これからであります。十分に成長した中から再出発するわけで、今後の経済成長を促す為にも、従来設備のメインテナンスはもちろん、新たな、成長に対するインフラ整備は欠かせないと思います。

しかし、そこにちょっと味付けをして、日本の新たなビジョンを加える。それは国民の精神的豊かさを実現する方法を模索しながらの、インフラ整備であります。単に、便利とか、効率が良いとか、それだけに留まらず、抽象的ですが、幸福度アップを考える。

日本は島国、海岸線が長い、経済大国、これらを考えても、海岸線を豊かにするという手もあるのではないかと思います。国民がもっと海辺に親しみ、その自然の豊かさを満喫できる。山も同じですが。これらは財産であります。

そういう意味で、公共マリーナを事業仕分けするどころか、もっと増やす方向性があっても良いのではなかろうか?誰もが、安価に利用できるマリーナとしてです。ヨットは贅沢品というイメージがありますが、小さなヨットで良いし、保管料が安ければ、より多くの方々が利用できる。だいたい、公共ですから、そこに儲けを考える必要は無く、国民へのサービスであります。もちろん、むちゃくちゃしちゃいけませんが。

アメリカの東海岸の何という街かは忘れましたが、マリーナがあって、その海岸線は散歩道が整備されていて、それが非常に長く整備されている所がありました。もちろん、たくさんのショップがあり、観光客相手の土産もの屋から、映画館、レストラン、屋台みたいなショップ、それこそ端から端まで行くのはちょっと大変なくらい。そこには多くの観光客が来て、さらに地元の方々もぶらぶら遊び、ベンチで海を眺める人達、走り回る子供、デート中の人、老若男女がたくさん、とっても、落ち着きがありながら、賑やかなのであります。まさしく、先進国だな〜という感じ。

日本の港開発は商業優先でした。もちろん、それも大切ですが、その次に、こういう公共マリーナや周辺の開発等を考えても良いのではなかろうか? ヨットやる人達はもちろん、やらない人達にも使える施設、観光客も来る魅力、そこにビジネスを展開する人達等々で、日本の先進国たる豊かさが創出できないだろうかと思う次第です。

経済成長はもちろん必要ですが、これからは成長一辺倒では無く、豊かさとビジネスが両立できるような方法は無いもんでしょうか? その象徴が公共マリーナであります。マリーナをヨットオーナーで独占しようとするからいけないんであって、周辺施設を含めて、一般の方々にとっても使えるマリーナ総合開発? 人があ集まればビジネスが成立し、そうなれば税金も取れるし、何かうまい方法は無いもんでしょうか?つまり、心の豊かさを含めた経済成長が何とかできないものでしょうか?便利はビジネスにとって重要です。それで、便利ばかりを追求してきました。しかし、それにちょっと変化を加えて、豊かさを。その豊かさもビジネスになるわけですし。心豊かなビジネス?
単なる理想でしょうか?

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