第七話 ヨットの作法

探求する事、それ自体がセーリングという遊びの作法ではないかと思います。この探求を通じて、知識を得て、技術を得て、その結果もたらされるセーリングを通じて、達成感や面白いというフィーリングを得る。セーリングゲームの本質はここにあるかと思います。この知識や技術を得るというのは、ひとつづつ知って、徐々にレベルを上げるそのプロセスこそが、面白さそのものなのではないかという気がします。

しかしながら、探求すると言っても、そう簡単な事でもありません。特に問題は最初の頃でしょうね。なかなか解らない。なる程、こうかという事がなかなか見えてこないかもしれません。これはまるで、難しい本を読んでいるようなもので、知らない言葉が多いし、理解できるのは半分以下となると、その本はちっとも面白くありません。でも、それなりに知識を得ていけば、その本の半分以上がわかってきて、少し面白さも出てきて、そうなると、もっと理解ができるようになる。さらに読み込むと、内容に対する疑問が湧いたり、反論したくなったりもします。

それと同じで、セーリングにおいては、最初は解らない事が多い。でも、そこでやめずに、探求を続ける事によって、少しづつ理解度が高まります。いろんな変化がある事は分かっても、それらを統合する理解ができなかったのが、やがて少しづつ解ってくる。そうなってきますと、やがて面白さという事が顔を出してくるのではないかと思います。

探求せずとも、楽しさを得る事はできます。天気の良い日に、友人を招待して、爽やかさを感じます。それはとっても楽しいひと時だと思います。しかし、毎回、誰を誘うかもありますし、天候という環境次第でもあります。これはとっても頼りない楽しさです。

楽しさという面だけを考えますと、お金を出して、相手が楽しませてくれるという遊びがありますが、
それに比べたら、ヨットでの楽しさというのは、実に頼りない。相手は商売ですから、お金さえもらえば、いろいろ気を使って楽しさを演出してくれます。しかし、ヨットは、自分で演出しなければならないし、その上、天候次第という事もあります。実にあてにならない。

つまり、ヨット、特にセーリングという遊びは、楽しさのみを求めては、他の遊びに勝てないかもしれないという事であります。もちろん、これを否定しているのでは無く、ただ、これのみではヨットを十分に楽しむという事は難しいのではなかろうか、という事です。

しかし、もし、そこに探求という遊びを持ち込むならば、他の遊びにも負けない、或はそれ以上の面白さを獲得できるのではないかと思います。だからこそ、たくさんの人が、夢中になって練習したりして、面白さを獲得しようとされる。ゴルフとかそうでしょう。もてなされる楽しさは、それとして、これとは別に面白さを得たい。それが、あらゆるスポーツであるし、趣味なんかもそうです。ですから、レジャーと趣味は違うものであります。

セーリングにおいて、楽しく遊ぶ事はおおいに結構な事でありますが、それだけでは不十分で、不十分というのは、長期間に及ぶ遊びだからです。楽しさはその場限りになり、面白さは長期に及ぶものかと思います。その長期間という事と、セーリングが持つ本質的なゲーム性を考えれば、探求してその深さを求める処に、セーリングの面白さがあるのではないかと思います。

セーリングは遊びではありますが、遊びにも種類があって、もてなされる遊びと、探求する遊びがあると申しました。前者はもてなしてくれる相手が居ます。後者はそれが居ない。自分で探求しないと、何にも与えてくれない。お金払っても駄目であります。例え、プロを雇って、そこに同乗しても、そこで楽しさを得るなら、それはもてなされている事になり、もし、探求心があるなら、それは面白さに変わる。そこを十分理解するならば、やはり探求して、自分で面白さを求めるのが、この遊びの作法、使いこなし方ではないかと思います。

ヨットを足代わりに使えるなら、これは別の様相を持ってきますが、ヨットはどう考えても何の役にもたちません。だからこそ、遊びを満喫できるし、探求する事で、面白さというものを、より味わう事ができるかと思います。

その方法はいくつもあるんでしょうが、要は、ヨットって一体どうなっているのか? セーリングというのは、どういうものなのか? そういう事の探求でありますね。ただ、探求しようとしますと、楽なばかり、楽しいばかりでは無くなります。でも、そこを進める事で、必ず一方では面白さというものが出てくると思います。方法はどういう具合に進めるにせよ、早くこの面白さに達されん事を願います。

しかし、我々が忘れてはならない事は、探求の目的は何か?という事で、それは面白さを得るという事だと思います。つまり、探求しながら、面白さを得なければ意味が無くなります。それは無理をしないで、面白さを感じながら少しづつ進む事ではないかと思います。一挙に難しい事に飛びますと面白さが出てこないかもしれません。ですから、興味を持って、疑問を持って、それを解決する。
解決できれば面白さが解ると思います。疑問が出るともうこっちのものですね。解らない時は、何が解らないかが解りませんから。

つまり、ヨットを長期間に渡ってやるという事は、レジャーから趣味への発展であり、趣味とするうえにおいては、探求という作法こそが、セーリングにしろ、クルージングにしろ、面白さを獲得できる方法ではないかと思う次第です。それで、当社はセーリングの方をお薦めしています。

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