第四十話 数値データ

セーリングするにあたっては、自分のヨットの数値データを知った方が良いと思います。すると、そのデータが、今、自分がセーリングするヨットの客観的な基礎になりますから、そのヨットで実際セーリングして、どうなのかという実践経験が上積みされます。

自分のヨットのデータはこれこれで、実践セーリングを体験的にもち、ヨット全体の事が良く解るかと思います。そのセーリングに慣れてきますと、満足感ばかりでは無く、不満も出てくるかもしれません。もうちょっと速いのが良いとか、もうちょっとスタビリティーが高いのが良いとか、いろいろ出てくるかもしれません。

そうした時、もし次のヨットに買い換えたいともし思った時、これまでの数値データと経験が物を言う事になると思います。試乗をちょっとしてすべてを理解する事は到底難しい。相当な経験者でないとわかりません。それでも解るかどうか?微風の時はどうか、中風、強風ではどんな動きをするか、波に対してはどうか、本当は何度も乗らないと解らない。でも、そうそう試乗する事は困難です。既にそのオーナーに意見を聞く事はできるかもしれませんが、だいたい自分のヨットを悪く言う人は居ないでしょう。

そうすると、過去の経験のデータが役に立つと思います。そこで、一番にいつも上げるのがSADR値です。そして、復元性です。

いつも言いますが、SADR値は排水量に対して、セール面積がどの位あるかです。数値が大きい方が、セールエリアは大きいという意味になります。しかし、数値が大きいから優れているという意味では無い事はもちろんです。

SADR値が大きいと、速く走れる可能性はあります。しかし、速ければ速い程に、風が強くなればなる程、ゆったり感は減少し、緊張感は高まり、操船にもより気を使う事になるでしょう。船体はより強固で無ければなりません。また、復元性も高くないといけません。ではどの程度の数値が良いのか?

私は一般的にはセーリングを楽しむという点においては、SADR値20〜25ぐらいと考えています。
その上で、十分なスタビリティーと船体強度がある事と考えています。しかし、この数字で全てが解るわけでは無いと思います。何故なら、人間がやる事ですから、みんな違いますから、数値データはあくまで参考であり、この時、これまで乗ってこられたヨットの数値とその時の自分の経験がありますから、それを基準に考えれば、とっても理解がしやすくなると思います。

また、他のヨットの数値を出して、いかにもクルージング艇というのがどの位の数値を持っているか、いかにも速いヨットがどの位の数値を持っているか、そういう事を含めて考えますと、そして、自分のヨットの数値と体験を考えていきますと、相当な事が解るのではないかと思います。

ですから、今のヨットよりもっと速くと考えたとしたら、SADR値を調べ、そして、それに対する重心の低さとか、バラスト比とか、幅とかを見て、その性能をある程度想像する事ができるようになります。そうしたら、次に進むべき方向も解り易くなるのではないかと思います。

或は、逆もそうで、これから外洋クルージングに出たいとなると、速さよりも、ゆったりして疲れにくいヨットの方が良いという事になります。そういう時でもSADR値を見れば、数値が低いヨットの方が良いわけです。

このSADR値だけで判断する事はできませんが、その数値が示す値は、あるコンセプトを表します。という事は、それに向かって、他の要素も多少の違いはあれ、そこに調和していくと思います。
ですから、何と無く進むという事では無く、客観的なデータと、実際の自分の経験とを合わせながら、確実な方向に進む方が良いと思う次第です。ですから数値データは重要だと思います。

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