第三十八話 バランス

客観的なデータによって判断する事は、よりそのヨットを知る事になると思いますが、さらに全体のバランスも見ないといけないと思います。

例えば、あるヨットですが、排水量が軽い。それでセールエリアとの関係(SADR)を計算しますと、高い数値が出るとします。ですから、これは速いと思います。しかし、何故、このヨットは軽いのか?どうやって軽くできたのか?バラストを見ますと、30%を切ってます。という事は、バラスト重量を削って、軽くしたのか?そんな風に考えられない事もありません。

排水量が5,000kg とした場合、そのうち、1,500kgがバラストだと仮定しますと、バラスト比は
30%です。仮にセールエリアを計算して、SADR値が20あったとするなら、この数値は、排水量が
変わらない限りは20のままであります。バラスト比には関係ありません。

もしバラスト比を40%にあげるとしたら、排水量を変えないなら、バラスト重量を2,000kgとし、船体を以前は3,500kgで造ったのが、今度は3,000kgで作らねばなりません。すると、500KGの重量をどうやって落とすかが問題になります。でも、そうすれば、バラスト比40%で、SADR値は
20をキープします。500KG落とすと、コンセプト変わってきませんかね?でも、SADR値は20のままなんですから、ちょっとこれはどうか?

或は、船体をそのままの重量で建造するとしたら、重量は3,500kg この場合、バラスト重量を
2,300kgにすればバラスト比は40%です。、しかし、そうしますと合計重量が5,800kgになります。そうすると、SADR値は、20だったのが、18に下がります。

セールエリアはやたらとでかくすると、操船が大変になりますから、あまりできません。もちろん、コンセプトによっては少し大きくしたりはしますが、あまり極端な事はしたくない。すると、バラストを除く船体をどう作るか?クルージング艇は船体がどうしても重くなります。

最初のバラスト重量1,500kgをそのままで、船体を軽くして40%を達成するとしたら、今度は船体を2,250kgで建造しなければならなくります。という事は、最初の船体重量3,500kgから1,250kgも落とさなければなりません。でもそうできると、排水量は3,750kgになり、SADR値は24と上がります。

バラスト比を高め、尚且つSADR値を高める事は結構大変です。要はバラストを除く船体をどうやって軽く造れるかになりますし、当然ながら、軽くなれば、速くなりますし、それで柔らかい船体では困ります。ですから、硬い船体も必要になります。ですから、速いヨットを造る事は結構大変な事なんですね。

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