第二十三話 セーリングの面白さ

誰でも最初に感じる事は、セールを上げて、エンジンをカットして、風だけの力で走る時の感覚ではないでしょうか?これはボートにも無い、車にも無い、独特の感覚です。誰もが一種の高揚感を得たのではないかと思います。

さらに進みますと、セーリングにはいろんなフィーリングを得る事になります。大きくヒールして、ちょっと恐怖を感じた事もあるでしょうし、加速して、快感を得た事もある。ヨットは操作によって、微妙に変化していきます。

それで、もっといろいろ味わう為に、技術を得ようとします。セールトリミングの仕方、舵の取り方、タック時の操作、ジャイブの操作、基本的な走り方等々です。これは当然のプロセスという事になりますが、へたすると技術論ばかりが先行してしまう事もあります。技術が進む事は良い事であり、上手くなるのも良い事、より良く知る事も良い事です。

しかし、それらの最終目的は、それらの向上によって、自分のフィーリングがどう変わっていくかではないかと思います。つまり、セールトリミングをして、より適切な調整をする事によって、ヨットの動きが変わり、それによって自分のフィーリングにどういう違いが生まれるか? その違いが解らない限り、セールトリミングの本当の意味は無いのではないでしょうか?

セーリングを楽しむという目的を持つ場合、その変化を感じ取るという能力を高めていかなければ調整の意味すら解らない。頭が解っているだけでは、面白さが無い。そこで、重要な事は、セーリング調整をして、それを感じ取るという事になります。これさえ、感じる事ができれば、これは大きな面白さを生み出します。

ある調整をしても、その変化が解らないとしたら、やっても意味がありません。面白さがわかりません。でも、変化を感じ取る事ができれば、微妙な調整であれ、違いが解ると、面白さになります。
その調整が微妙であればあるほど、解れば面白くなります。

普段通り、みんなと同じように、コクピットに座って、舵を持ちます。それである人は、シートをほんの少し引くかもしれません。その時、もし、自分にその調整の結果が感じ取れれば、自分が調整した意味が解ります。それが不正解であったとしても。不正解なら再調整をすれば良いだけです。
このポイントは、正解か不正解の前に、自分が感じ取れる事ができるかどうかです。

1m引いたら、誰でも解る。50cm引いたら、50%の人は解る。30cmなら、30%かもしれません。10cmなら、5cmなら、どんどん解る人は少なくなります。それは人間の感覚度だけに限りません。ヨットの性能にもよります。ですから、性能は高い方が、感じ取りやすいから良いという事になります。でも、これも過ぎたるは別の影響を受けます。超敏感なヨットなら良いのかと言いますと、例えば、シングルハンドで乗るには難しくなります。敏感過ぎて、それでは舵もシートも全部ひとりで操作するのは難しくなる。元々こういうヨットはクルー有りで、分担しているから良いのです。逆に、鈍いヨットは、どんなに鋭敏な感覚を持つ人でも、その微妙さを感じ取る事は難しくなります。程良いバランスが必要になる事になります。

さて、セーリングを堪能するポイントは、操作をして、その変化を感じ取る処にあると思います。感じ取れない操作をしても意味が解らない。ですから、ヨットもそうですが、自分で感じ取ろうとする意思が必要になります。それはどんどん小さな変化にまで及ぶ事になります。

技術や知識ももちろん必要ですが、それに伴って、自分の鋭い感覚も養う必要がある。その方法は簡単で、感じ取ろうという意思だと思います。それを続ける事によって、昔は感じなかった変化を、当たり前のように感じる事ができるようになる。それはどんどん進みます。

これが面白くないはずが無いんです。例え、ピクニックセーリングしていても、ちょいと引いたシートによって、ヨットが反応して、その違いが解る。それが面白くないはずは無い。もし、セーリングの何が面白いのかと疑問に思われるとしたら、変化に感覚がついていっていないのではないかと思います。違いが解らないから、調整しても意味も解りません。

そこで、結論です。デイセーラーのセーリングは、自分の感覚を高めて、違いが解る男(女)になる事。これなしでは、本当にセーリングを堪能できないのではないかと思います。でも、これは難しい事では無く、感じ取る意思と、その継続によって、感覚はどんどん養われていくと思います。

ですから、特にシングルで乗る時は、感覚を意識して、感じ取ろうとする意思をもって、セーリングし、調整をしていく事が必要ではないかと思います。そのうち、みんなは感じ取れなくても、自分は感じる事ができるという具合になると思います。解るというのは、実に面白い事です。ですから、もっと多くを感じ取れるようにしていきます。それがセーリングの面白さではないかと思います。微風から強風までを、自分のコントロールで、いろんなフィーリングを得ます。それがセーリングの面白さの醍醐味ではないかと思います。感じ取る事ができればできる程、腕も必然的に上がるでしょうし、上がれば、自由自在にコントロールできるようになるはずです。これが面白くないはずは無いと思います。

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