第十三話 たかが遊び、されど

遊びとは言え、これから10年間、同じ遊びをすると考えますと、どうなんでしょう?ただ、楽しいとか、享楽的な遊びとして、そんなに長く続ける事ができるもんでしょうか?最初の楽しさを、10年間も持続させるなんてことは無理です。飽きます。一年に数回しか使わないというなら、何とか持つかもしれませんが、そんな事で始める人は居ないわけで、結果的にそうなってしまうという事はあるかもしれません。

それで、持続的面白さを維持する為には、やはり、深く入った方が良いという事になります。クルージングなら、どんどんどこかに行くべきだろうし、やはりクルージングにおける深さがありますから、それを堪能した方が良い。という事はたっぷりの時間が必要です。

或は、セーリングにしても、ただヨットを出して、そこらを走り回るというだけでは無く、セーリングの深さを求めた方が良いという事になると思います。

いずれにしろ、深さ、難しさ、新しい発見、そういう事を持続して持つ事が面白さであり、その面白さがあってこそ、10年間とか、それ以上の永い期間を遊ぶ事ができると思います。ですから、面倒くさがりだと、こんなに長い期間を遊ぶ事は、相当難しいと思います。

そのたかが遊びに、真剣に取り組みますと、その分、得る物も大きくなります。ただ、気持ちが良かったとかの次元では無いと思います。知識が増える、上手になる、それらは当然そうなっていきますが、その他にも、あらゆる状況において、自由自在にコントロールしながら、バランスを取りながら、走らせる事ができるわけですから、そこの気分たるや、なかなかのものであります。

目に見えた何かを獲得するわけでは無いかもしれませんが、ヨットの世界というものを手に入れる事ができます。それは日常とは違う、別の世界です。それも自由自在にコントロールできるわけです。そんな世界を手に入れる人は、そう多くは無いわけです。

享楽の世界は、たくさんの人達が、手段は違えど味わう事ができます。しかし、ヨットの世界は独特です。楽なだけでは無く、厳しさもあります。自然との対峙です。そこにもうひとつの世界、しかも、バーチャルでは無く、現実として獲得する。五感も刺激されます。ですから、されど遊びなんだろうと思います。

陸上の世界は、自分の思惑とは別に他人の思惑も絡んできます。だから難しい。でも、セーリングの世界は、他人の思惑は関係ありません。あるのは自然の変化。それは観察によって、少なくとも他人の思惑よりは解るかもしれません。つまり、そこでは自由自在を手に入れ易くはなる。思う通りの風にはできないが、風を読んで、それに合わせたセーリングゲームを造る事ができる。そういう世界を手に入れるのも悪くないなと思います。

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