第九十一話 ヨット談義

昔は、今よりもっと多くの方々がセーリングを楽しんでいただろうと思います。それがいつの間にか、あまりしなくなって、宴会船になったり、動かなくなったりしてきました。宴会が悪いわけでは無く、それどころか楽しむひとつの方法です。でも、酒飲んで車を運転できませんから、より取締は厳しくなって、その宴会さえも出来にくくなってきました。もともと飲酒運転はいけませんが。おまけに、年齢を重ね、クルーも不足しがち。だんだんとそういう状況に変わっていったと思います。ですから、動くヨットは少なくなってきたな〜と感じます。

もしそうなら、せっかくのキャビンがあるわけですから、週末はヨットに泊まれば良い。泊まるなら、酒飲んでも良いわけです。キャビンが有効利用されますね。でも、実際はと言いますと、これも少ない。相変わらず、週末の夕方には、全員と言って良いぐらい帰ってしまわれます。ヨット談義で一杯飲むというのも良いもんなんですが。 ヨット談義で無くてもいいですが。

昔、ヨット談義が頻繁に行われていた頃、ヨット談義がしたいのか、酒飲みたいのか解りませんが、でも、賑やかでした。昔ですから、ヨットに対する一般的知識もあまり無かったという事もあるかもしれません。キールはどんなのが良いか? ウィングキールってどうよ? ケブラーセールはどう?
リグの違いやら、いろんな事が、ヨット談義で交わされ、そこからいろいろ勉強していく。聞けば、必ず、誰かが教えてくれる。

コミュニケーションの場。知らない人同士が、ここで知り合いになり、仲間も増える。ヨットがボートと違うところはこういう処にもあったと思います。ヨット談義を通じて、仲間が増える。ボート談義というのはあまり聞いたことがありませんし。釣り談義はあるかも。

でも、そういう場所が失くなっていきました。これも一因かな? しゃれたレストランはあっても、そこで延々何時間もという雰囲気でも無いし、もっと気兼ね無い場所の方が良い。こういうヨット談義をやっていますと、酒飲み会で無くても、コーヒー飲みながらでも、そういうヨット談義をするものです。

そういう場所が失くなったらなら、じゃあ、ヨットでやれば良いんでしょうが、何故か、あまり聞きません。本当の仲間内だけになってしまいます。まあ、それでも、良いですが。

ヨット談義が失くなって、仲間意識が薄れて、会っても会釈程度になります。でも、本当は皆さん寂しいのかもしれませんね。マリーナは、オーナーにそういうスペースを提供すべきです。実際、そういう場所が無い事も無いのですが、でも何か違う。高級なら良いわけじゃないし、もっとオープンで、誰もが入れて、寛ぐ事のできる場所。 難しい注文です。 

もし、ビジネスが成立するならばですが、スターバックスなんかが来れば良いかも?お店の外にもテーブルを出して、大勢の人達がおしゃべりしてます。そんなにコーヒーがうまいとは思えませんが、失礼! 好みの問題ですから。でも、客は多いです。これにちょっとビールなんかも出してほしいな。そこに座っていると、知り合いの人達が、うろうろ通りますから、話ができます。ヨット談義ができます。そういうのが嫌な時は、自分のヨットに行く事もできます。

こういうのができると、マリーナの訪問回数が増えて、滞在時間も長くなり、そして、ヨットに泊まる人達も増えて、セーリングを遊ぶ人達も増えるかもしれません。人が集まると、スターバックス以外もお店ができて、するともっと人が増えて、それで、家族も楽しめるようになって、家族で泊まったりして、さらにファミリーセーリングが成立するようになって、賑やかになる。まあ、難しいでしょうが。
でも、海外では、そういうマリーナがたくさんあります。だから、彼らのスタイルが成り立っているのかもしれません。マリーナが賑やかになりますと、それを避けて、ヨットを出す事もできる。

日本のマリーナの失敗は、ヨットに関係無い人達をどれだけ呼び込めるかを考えていないからではないか?失敗と決めつけてはいけませんが。内側だけの人数では、お店は成り立たない。いかに外から受け入れられるか?それが成り立った頃、オーナー専用のクラブというのが際立つようになる。そこはオーナーもしくは、オーナーが連れてきたゲストのみしか入れない。そういう特権クラブです。それは他があるから成り立つのであって、それだけでは価値は無い。 以前、シンガポールのマリーナに行きましたら、そういうのがありました。一階は普通の一般も入れるレストラン。とっても賑やかでした。二階はオーナー専用で、オーナーは混雑した一階を尻目に二階にあがる。
なるほどね〜。

デイセーラーは実際どうよ? そんなヨット談義をしてもらいたいものです。それぞれが勝手な解釈をして、いろいろ話をしますが、それで盛り上がっていけば良い。レースの話題、クルージングの話題、最新艤装の話題、トレンドのセーリングの仕方等々。知ってる人は語り、知らない人は勉強になる。ヨット界を盛り上げるには、このヨット談義が日本中で行われる事かもしれませんね。

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