第五話 カセットコンロ

多くのヨットのギャレーには、2バーナー、3バーナーのプロパンを使ったコンロがあり、その下にオーブンがついてます。でも、多くの場合で、カセットコンロを持ち込んで、それを使うケースは多い。

プロパンガスの場合、日本で認められるのは銅管の配管です。それが長い年月で、腐食したりして、ガス漏れが心配です。でも、カセットコンロなら、簡単ですね。安いし。それに、料理に凝ったものを作るならまだしも、お湯を沸かすのがせいぜいぐらいなら、カセットコンロは簡単で安全でもあります。

お湯はエンジンの熱を利用するか、100Vの電気で作るかですが、陸電か発電機が必要です。その前に、どれほどお湯に重宝するでしょうか? 夏場なら水のシャワーでも良い。でも、長い間、タンクに貯められてきた水ですよ。あまりきれいだとは思えません。

冷蔵庫は12Vのバッテリーで動きます。マリーナにきて、スイッチONにしても、冷えるまでは時間がかかる。それにバッテリーをチャージしておかないと、バッテリーが心配になります。セーリング中でも、心配だからエンジンをかけておくというのも、ちょっとどうでしょうか?

それで、陸電をつないで、常時、冷蔵庫をONにしておく。そうしますと、冷蔵庫はいつも冷えています。バッテリーは陸電のバッテリーチャージャーでチャージしているから心配無い? ところが、
バッテリーは冷蔵庫にパワーをやって放電し、チャージし、その繰り返しで、あっという間にバッテリー液が無くなる事もあります。

考えてみましたら、これらの装備は全部、ロングの航海には便利です。何日も旅を続け、ヨットに泊まる時、タンクの水は新しく入れ替えられますし、比較的きれいに保てる。温水シャワーも有難いし、長い旅なら、そこそこの料理もつくります。冷蔵庫だって、いつも氷を手に入れられるわけじゃない。だから、これらの装備はロングクルージング用と考えて良いんじゃないかな?

さて、デイセーリングなら? 水はコンビニのペットボトル。これなら飲めるし、料理にも使えるし、コーヒーも美味しくいただけます。当然ながら、シャワーなんかは、海水浴に行った時に使うぐらい。
一日の汗は、マリーナのシャワーを使う。冷蔵庫より、アイスボックスに氷を入れて、冷えた飲み物を入れておけば、その日のセーリングぐらいは持つし、ソフトなアイスボックスで、コクピットに転がしておけば、手がすぐに届く。

それに、どこかにクルージングに行っても、毎日、どこかの陸上にあがるのなら、そこで、新鮮な水も手に入るし、氷も手に入る。ホテルに泊まるなら、温水シャワーと、ふかふかのベッドで寝る事もできる。

ものは考えようで、長い旅、どこにも寄らない旅と、デイセーリングか、毎日どこかに寄るクルージングでは、考え方も違ってきます。物があると、それらのメインテナンスが必要ですし、壊れる事もあります。でも、デイセーリングなら、むしろ無い方が良い。

カセットコンロと、ペットボルトの水と、やかんがひとつ。これで、コーヒーでも、ラーメンでも作れます。レトルト食品もあります。後は、アイスボックスにビールなんか入れておけば、もう十分ではないでしょうか?

そんな風に気軽に考えられるデイセーリングだからこそ、セーリングも気軽にできるようになる。
セーリングを気軽にできるから、頻繁に出せる。頻繁だから、たとえ今日が無風であっても、強風で出せなくても、また今度と気軽に思えます。出さなかった時は、カセットコンロで、やかんにペットボトルの水を入れて、うまいコーヒーでも入れて、読書でもしましょうか。 或いは、好きな音楽でも聴きましょうか。デイセーラーは別荘にはならないかもしれませんが、オーナーの書斎ぐらいにはなります。でも、決して書斎が主では無く、セーリングが主ですから、すごく広いとつい勘違いしますから、勘違いしない程度に狭く、でも、十分な程度。 キャビン内をうろうろできる程広くてはいけないわけです。

広いキャビンはロングクルージング用です。それでも、走っている最中は、キャビンでは無く、コクピットに居ます。キャビンを使うのは、どこかに寄って、そこで夜を過ごす時。それ以外は、宴会に使う時ぐらいです。広いキャビンがあるからこそ、そこに気を取られ、セーリングへのエネルギーがちょっと削がれる事もあるかもしれません。でも、ロングクルージングには必要でしょう。

だから、ロングクルージング、ショートクルージング、デイセーリングと、使い方が違い、装備も違う。必要な物は必要ですが、無い方が良い場合もあります。

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