第十六話 デザイン

ヨットのデザインはプロのデザイナーによって描かれます。素人が鉛筆なめなめ描くわけでは無いので、その道のプロが描くので、どのヨットも基本的な性能はもってしかるべきと思います。

しかしながら、現実には、とってもバランスが悪いヨットが出てきます。何故?と疑問に思ったりもします。ただ、性能的に速いとか遅いとか、そういう事では無く、非常に乗りにくいヨットがある。でも、やっぱりプロのデザイナーによるデザインであります。

なるほど、ヨットの性能だけを考えて、デザインするわけにも行かず、要求は多いわけで、それらをできるだけ満たしながらのデザインになります。それでも、基本的な性能は維持すべきだろう。作りは別にしても。でも、やっぱり、乗りにくいヨットは存在します。

あるデザイナーの話ですが、完成したデザインを、造船所が勝手にいじる事があると聞いた事があります。例えば、キャビンを少し広くしたり、その為に、船体のラインが少しいじられる。その少しが大きくセーリングを左右する事がある。デザイナーと造船所の力関係かもしれません。

それで、同じ造船所でも、あるモデルはデザイナーのオリジナルに近い。あるモデルはいじられてる。そういう話を具体的に聞きました。過去に乗った経験があったので、なるほどと納得した次第です。いずれにしろ、そのデザイナーの名前が乗るわけですから、文句も言いたいのでしょうが、そうも行かないのが現実。デザイナーも、食わなきゃならない。

造船所がいじると言っても、コンセプトが変わるわけではありません。ちょっと、よりアピールする為に、少しいじるわけです。ある造船所は、ヨットを買いたいご主人では無く、その奥さんにアピールすると言っていました。決定権は奥さんにあるから。これも成程です。

全ての造船所がそうだと言うわけではありませんが、そういう造船所もあるという事です。彼らの都合です。時に、他の艤装等もそうですが、まことしやかな理屈をこねて、これが良い、こうでなければならないという場合があります。でも、どうも疑問に思える事もあります。彼らは、彼らの都合で、理屈を作る事があり、それは間違いでは無いのですが、それでなければ駄目みたいな言い方をしますが、そうでも無い。そういう事もあります。彼らにとって都合が良いからです。

我々は、つい、新聞を信じ、テレビニュースを信じ、プロのデザイナーを信じ、造船所を信じ、雑誌記事を信じます。つまり、権威のあるところを信じる癖がある。でも、実際は、彼らは、彼らの都合で物を言う。ですから、自分で見る目を養う必要がある。とても、難しい事ではあるのですが。

一般に、専門家では無い我々にとって、専門家程の知識は無いわけですから、専門家が言う事に反論するデータを持っていません。ですから、そうなのか、と納得せざるを得ない事も多い。また、他の、オーナー達に聞いても、それぞれの意見があって、それらは全て事実ではあるのでしょうが、真実とは限らない。

自分で経験を積みながら、自分が心から感じた事を積み重ねるしか無いのでしょうね。人の意見を拒否するのでは無く、あくまで参考に。他人の意見は、少なくとも、理論的に納得できるかどうか? 良くで考えて、理論的に構築して、客観的な結論に達する事ができるようになれればと思います。その為にはより知るしかない。情報を得て、経験を通して、判断するしかない。或いは、いろんな人の様々な意見を総合して、客観的な判断をしていくしかない。

そういう事が少しづつでも分かるようになるというのも、面白さの創造にはなるのではないかと思います。専門家はこう言う、ベテランはこう言う、しかし、どう考えても、別の方法でもできるはずとか。
そういう事が少しづつ考えられるようになると、面白さも増幅していきますね。簡単ではありませんが。その為には、常に、自分で考える事が重要かと思います。それが本当にヨットを自分の物にする方法ではないかと思います。こういう遊び方もありますね。

むしろ、そういう遊び方の方が面白いかもしれません。ただ、速いというだけが面白さというより、上手というだけが面白さというより、いかにを問い、ひとつづつ自分の物にしていく方が、遥かに面白いかもしれません。

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