第十三話 遠近の探検 

遠くに行くか、近くで遊ぶか? 遠くへは滅多に行く事はできないが、近くは簡単にしょっちゅう遊べます。遠くは、遠くを探検する面白さがあり、近くは、近くでの探検の仕方があります。いずれにしても、探検というエキサイティングな要素が面白さには必要かと思います。

遠くの探検は、行くだけで、探検という効果をもたらします。出れば、いろいろあり、それが探検になります。しかし、近くは見慣れた風景となり、何かあってもすぐに帰れるし、ですから、そこには工夫が必要になります。近くは身近なだけに、しょっちゅうできますが、それ故に、工夫が必要ではないかと思います。

近くを遊ぶに、最も良い方法は、セーリング自体を探検する事かと思います。近くにクルージングに行っても、楽しいですが、何度も行きますと、楽しさは減少し、行くメンバーを変えるとかの、いずれにしろ、工夫が必要になります。

セーリングは動くだけでも、初心者には十分な探検をもたらしますが、そのまま何年も過ごす事はできません。初心者は初心者では無くなっていきます。それで、いかにセーリングをするかという課題に入っていきます。ただ動くからいかに動くか。

セーリングは深いと言われますが、その深さをさぐっていくのが、セーリングにおける探検ではないかと思います。それは遠くを探検するのとは趣が違いますが、それと同じだけの深さを持つかと思います。

遠くを探検するに、いろんな装備を設置して、できるだけ楽に行けるようにします。探検は、操作にあるわけでは無く、外にあるわけですから、外と対峙するには、できるだけ楽な方が良い。

セーリングを探検するには、楽なのが良いわけでは無く、操作して、その反応を見るわけですから、操作しないで良いのは、探検にはなりません。ですから、操作して、その反応、操作、反応と続いて行きます。

幸い、近場であっても、状況は常に変化します。この変化があるからこそ、探検をする事ができます。いつも同じなら、セーリングの探検も、すぐに探検では無くなっていくでしょう。それが常に変化するものですから、探検は尽きないし、面白さも尽きない。

レベルが上がるという事は、大きな変化を感知する事から、小さな変化を感知すること。大きな変化は誰にでも解りますが、小さくなるに従って、感知しにくくなる。それに大きな変化には対応がし易いですが、小さな変化には対応が難しくなる。

つまり、セーリングの探検は、大きな変化から小さな変化への操作とその反応を探求する事と言えるかもしれません。大きな変化は、弱風から強風へ、強風から弱風へという変化ですが、その強い風でも常に変化していますし、弱い風も変化しています。変化が分かれば、分かる程に、もっと変化が見えてくる。

言葉で言えば簡単ですが、実践は難しい。どこまで感知できるかという観察力と、繊細な体感力と、セーリングの理屈と、感じる力が必要になり、人間の持つ基本的要素を鍛え上げる事に繋がる。
大胆であって、繊細であって、体を使うし、頭も使うし、感性も使う。

探検は楽な事ばかりでは無く、いろいろあります。でも、いろいろ無いと面白さは感じられないし、いろいろあるから辛い事もあります。そのいろいろが無いと退屈してしまいます。退屈こそが、最大の敵であります。でも、自然は変化しますから、点で考えれば、吹かない事もありますが、これもいろいろのひとつで、その点は吹く事もあり、長い、長い線でいろいろあるところに、面白さを創造する。点を見て、線を創造するという事になるかと思います。

セーリングに集中しますと、変化が良く分かる。まずは、集中力ですね。それさえあれば、変化が分かれば、考えるし、集中力があれば、感じられるし、集中力は全ての源泉かと思います。という事は、遠くを探検する事は、外的な探求であり、近くを探検する事は、内的な探求という事になるのかな?もちろん、どっちかそれだけなんて事は無いんですが。

兎に角、遠くだろうが、近くだろうが、探検こそが面白さの源泉でしょうから、もし、退屈感を感じていたなら、探検心が薄れてしまっていると思った方が良いかもしれません。それは自分のせいだという事になりますね。是非、日々の探検として、セーリングを遊んで頂きたいと思います。探検と言っても、気は楽に、遊園地に遊びに行くようなものです。但し、面白さは自分で演出しなければなりませんが。

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