第八十一話 短時間が良い?

いくら快適なヨットであろうと、何十時間も乗ると苦しくなります。世界を回るのはすごい事なんでしょうが、でも、来る日も来る日もヨットの上では苦しくなる。楽しさを求めたのに、苦しむなんてこれいかに?

風が無くなると退屈になります。それがロングに出ると、そこから逃れる事はできません。風が強くなると苦しくなります。これも逃げる事はできません。程良い風なら快適で気分も良くなります。しかし、これも何十時間も続くと苦しくなります。つまり、何であれ、同じ事が長く続くだけで、人は苦痛を感じるようになります。

それで、2,3時間ぐらいなら、楽しさだけを味わう事もあります。風が無くなっても2,3時間、強い風でも2,3時間、それが嫌なら、さっさと帰る事もできます。

ロングクルージングに出るなら、いくら快適な風でも、セーリングだけに集中する事はできません。他の事もしなければ苦しくなる。だから、音楽を聴く。何かを飲む。食べる。おしゃべり。でも、短時間なら、セーリングにのみ集中して、その味わいを得る事も可能ですし、苦しくなる前に楽しいうちにやめる事もできます。

それが私の考え方です。私見ですので、他の人は違う考え方をします。ロングが好きな方もおられます。それはそれで良いわけです。彼は、また違う考え方をもって、ロングの旅を楽しむでしょう。
みんなが同じ考え方を持つ事は有り得ない事ですから。でも、いくらロングが好きだと言っても、同じ状態が長く続けば苦しいには違いない。ただ、その果てには、到着というご褒美があります。

苦しさの果てのご褒美と、セーリングには苦しさは少ないが、ご褒美は無い? 否、それではする意味がありませんが、ショートの場合は、その過程において言葉にはできないような素晴らしい味わいを得る事があります。それがご褒美ですね。つまりは、ご褒美の種類が違います。そして、このふたつのご褒美の価値はどうでしょうか?どっちがより幸福を感じるでしょうか?

結局は、どちらでも無い。価値観の違いです。肉が好きか、魚が好きかの違いでしょう。しかし、何が好きなのかは知っています。知っているから、ロングにするかショートにするかが解ります。だから、それを味わう事ができます。肉が好きなのに、魚を食べては面白く無い。

でも、いくら肉好きでも、毎食肉ばかりではこれも苦しくなります。だから、ちょいちょいと違う物も食べたくなる。それで、ロング好きも、たまにはセーリングを楽しみ、ショート好きも、たまにはちょっと遠出する。或いは、誰かを誘ったり、宴会したり、昼寝したり、魚釣りしたり、いろんなバリエーションを持ってくる。それで、また好きなロングやショートを楽しめる。

結局は、基本的好きはどこにあるのでしょうか。それが主でありますね。それで、私の主はショートであり、セーリングなので、デイセーラーをやっています。デイセーラーの良さは短時間だという事。いくら良い状態で走ろうとも、長く続けば苦しくなりますから、その時はすぐにやめて帰る事ができますから、良いとこだけを味わう事ができる。強風で我慢したとしても、長くは無い。それに、腕が上がって、ヨットも良くなれば、かつて我慢を強いられた強風も、面白さに変わる可能性もある。
ロングでの面白さは無いかもしれませんが、でも、違う面白さがありますし、何と言っても、苦しさに耐える事は少ない。

面白さを感じる限度は、2,3時間ぐらいではないか?集中できるのはそれぐらいではないか?
もし、サッカーや野球の試合が10時間あったら?コンサートが2日も3日もあったら、いくら好きなスポーツでも、いくら好きな歌手であっても、疲れてしまうのではないでしょうか?2,3時間というのは、誰もが遊べる程良い時間ではないか?2,3時間の映画は面白く、10時間も映画があったら、見るのも大変ですね。例え、寝っころがっていても。

それで、短時間の集中型。それが面白さを得るもっとも良い方法ではないかと思っている次第です。それにヨット以外にもする事はたくさんありますから。いろんな事して楽しんだり、面白がったり、いろいろ味わいたいと思っています。もちろん、この短時間という時間感覚も人それぞれですね。

2,3時間のセーリングを集中してやりますと、あっという間に過ぎてしまいます。面白い事はあっという間です。それで、しょっちゅうやれる。そういう事を繰り返していきますと、セーリングに深く入って行きたくなります。それが面白さだと思います。ロング好きの方にはご勘弁。異論はたくさんあると思います。当然です。あくまで私見ですから。ある意見があれば、必ず別の意見もある。だから面白い。みんな一緒は有り得ない。

北海道や沖縄に飛行機で行くのはまだ良いですが、海外になると、飛行時間が長くて苦痛になります。でも、我慢。だから、飛行機の中で、酒飲んだり、映画見たり、音楽聴いたり、読書したり、おしゃべりしたり。それが無いと苦痛だけで、とっても海外なんか行けません。結局、いろんな事の変化を加える事が必要です。ロングクルージングでも同じ事でしょうね。それとも、私が短気なのでしょうか?気は長いつもりではいるのですが? ショートは面白く無い、少なくとオーバーナイト以上じゃないと、と言われる方もおられます。それは単に、肉か魚の違いです。

2,3時間で区切る。午前中に2、3時間仕事して、昼食を食べて、昼から2,3時間また仕事して、お茶を頂いて、また2,3時間仕事して・・・・・・。休みの日は、2,3時間の映画を見て、2,3時間のスポーツしたり、また2,3時間の趣味に興じたり。それ以上長くなりますと、それ以外の事を間に挟んで気分を転換する。2,3時間というのは良い時間ではないかと思います。ヨットも2,3時間セーリングして、それから2,3時間の宴会をしても良い。時間を区切って考えれば、ひとつひとつの2,3時間の行為が、濃縮されていくのではないかと思います。

ロングクルージングにしても、3時間程度でウォッチ交代というのは楽ですが、それ以上になると、少し苦痛を感じてくる。だから、2,3時間で何か違う要素を入れておくのが良いのでは?2,3時間経ったら、お茶しましょう。

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