第三十六話 ラットとティラー

ラットを好む方々は多いです。車と同じ要領で操作ができます。一方、ティラーを好む方もおられます。ラット操作は慣れないと、舵がどのくらい切れているか解らない時があります。車なら地面にそって動きますからすぐに解りますが、ヨットの場合、海面に沿ってとは言っても、風であらぬ方向へ動く事もあり、一瞬、舵操作が間違ったのか?と勘違いする事もある。この点、ティラーは舵の方向は一目瞭然です。

ラットは、ラダーシャフトに扇状のコートランドという物を設置し、それにワイヤーを繋いで前側にリードし、ステアリング位置で、デッキを貫通して、ピデスタルというポストの中を通じて、歯車にかけ、またコートランドに戻る。歯車と連動したシャフトにステアリングを設置します。ステアリングを回せば、歯車が回って、ワイヤーを動かし、コートランドを動かし、舵を切る。そういう仕組みです。

小型艇にラット仕様が少ないのは、これらの装置を設置するスペースの問題かと思います。スペースさえあれば、現状がティラー仕様でも、ラット仕様に改造する事はできます。ただ、ラット仕様にしますと、ウィンチが遠くなったりして、操作がしにくくなるという事もありますので、要注意でしょう。
最近では、ラットのすぐ横ぐらいにウィンチを設置してあるヨットがありますが、そういう事を考えての配置ではないかと思います。これなら、ラット持ったまま、ジェノアのウィンチを操作できます。

好みはいろいろ、どちらが良いという事は無いと思います。

ラット仕様には、必ず緊急用ティラーがついてます。もし、万一ワイヤーが切れた時の為に、緊急用のティラーをラダーポストにダイレクトに差し込んで操作ができるようになっています。ティラー方式は、この緊急用ティラーのように、ダイレクトにラダーポストを操作する事になります。

ラダー操作が非常に重いという場合、ステアリングにして、そのステアリングにしますと、軽減されるという事があります。この点、ティラーはダイレクトですから、ラダーの設計そのままに、重さが伝わります。逆に言いますと、それだけラダーの感じが伝わると言えます。

もし、ラダー操作が軽ければ、それだけ、波の微妙な具合さえも、ティラーを通して良く手に感じられます。それを好む方々も多いです。

ティラーだと、コクピットの中央あたりに座って操作します。そうすると、いろんな艤装に手が届きやすい。反面、ティラーの可動範囲にゲストが座ると邪魔にもなる。

ラットの場合は、円形ですから、操作しても位置は変わらない。コクピットに座ったゲストも邪魔にはなりません。反面、前方の艤装からは遠のいてしまいます。

好み、シングルかダブルか、各艤装の位置、そういう全体を考える必要はあろうかと思います。シングルでもオートパイロットを使えば何とかなりますが、強風時や、セーリングを楽しむという観点から言えば、オートパイロットは最低限に留めたい。運転して動かすのが目的では無く、走らせて楽しむのが目的ですから。

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