第九十四話 操作性とヨット人口

最近の車は、もう出来上がってきた感があります。電気自動車は別ですが。だから、GPSが標準搭載されたり、オーディオに凝ったり、電話がかけられたり、本来の車としての機能外の充実が図られてきているような気がします。人が車に求める、車としての性能は、もう充分かなという感じがしています。充分に快適感があります。

ヨットのヨットとしての性能という場合、これは難しい物があります。誰もが、セーリング性能を求めるわけではありませんし、また、クルージング性能とは別なものでもあります。ですから、ヨットを問う場合、セーリング性能とクルージング性能を分けて考える必要があるのかもしれません。

そのうえで、両方に必要なのが、操作性という問題かと思います。究極的には、どんなヨットであろうとも、シングルで操作が容易ですというのが行き着く所ではないかと思いますが、その為に徐々に、そういう装置が開発されてきています。

御存知の通り、難しいのは、狭いマリーナからの出し入れです。今は、大型艇のみですが、ヨットが蟹のように、横歩きができるようになりました。多分、いつかは、小型艇にも搭載できるようになるかと思います。そして、いつかは、誰もが、簡単にヨットを動かせるようになるかと思います。

しかし、そうなると、ヨットはレジャー的な使い方が増えていきます。それで、他のレジャーがそうであるように、レジャーはヨットがあるだけでは遊べない。何か周辺に、いろんな遊べるスポットが必要になるかと思います。例えば、ちょっと立ち寄って食事ができる場所とか、そこで遊べるスポットとかです。

海外で、ヨットやボートがたくさんありますが、このあたりの施設が違います。マリーナも違うし、マリーナ自体にエンターテインメント性があります。そうなると、多分、ヨットの使い方が異なってくる。一般レジャー化したヨット遊びでは、その周辺の施設におうところが大きくなるのではないかと思います。海外にはそれがある。だから、ヨットやボートの人口は増えるのではないか?欧米でも、レースやセーリングそのものを興じている割合は、全体からしたら低いのではないか?

残念ながら、日本にそういう施設が少ない。ヨットをレジャーとみるなら、そう面白い場所は無い。それらが充実すれば、多くの人達が、ヨット遊びを楽しめる。欧米並みにヨットを別荘化する人達も出てくるのではないか?日本人の遊びに対する考え方もあるでしょうが、そういう施設が周りに点在するなら、きっと日本人もそういう遊びを楽しむようになるのではないか?

ヨットは日本人に合うのか?という疑問がありますが、それは、施設さえあれば、そういう遊びをしたい人は多いのではないかと思います。それが無いから、自分で遊ぶしかない。自分で遊べる人達だけが、今は、ヨットやボートをやっているのかもしれません。

今後、ヨットは、もっと簡単に操作できるようになるかと思います。しかし、周辺の施設はあまり期待はできません。従って、日本でヨットを遊ぶというのは、自主性が重んじられる。ヨットは簡単に操作ができるだけでは遊べない。自分の遊びをどこに持つかが重要ではないかと思います。

自分で考えて、自分で計画して、どこかに行って、自分で何をするかを考える。自分でセーリングの面白さを見出す。自分で、レースに参加して、レースの面白さを見出す。そういう事が必要で、他のレジャーのようにはいかない。他のレジャーは、こんな面白いものがありますよと、相手が考えてくれます。

そういう中で、ヨットをやるというのは、かなり自主性を持つ方になろうかと思います。レースをやるも、クルージングに行くも、セーリングそのものさえ、楽しもうと思ったら、自主性が発揮されなければならないかと思います。そこが多分、欧米とは大きく違うところではないか?

そこで、当社としては、最重要テーマとして、日常にセーリングそのものを楽しむという事にしています。目の前でできて、しかもいろんなフィーリングを味わえて、だれもが簡単に出来、しかもそこに入れば深いセーリングです。セーリングの大胆さから妙までを味わえる。そこに必要なものは、そういう気持ち、意識を持つ事だけです。ただ走っているだけでは無く、いかにを問う事だと思います。

どこかひとつのテーマに面白さを感じたら、それが主になって、他のいろんな事も遊べるようになるかと思います。つまり、何かひとつ主になる物、自分のヨットの使い方、遊び方の主を持つ事が重要かと思います。日本では、誰も遊んでくれない、自分で遊びを創造しなければならない。それがヨット遊びが一般化しない理由のひとつでもあるような気がします。

もう20年ぐらい前でしょうか、英国の造船所の人から、日本はもっとソフトを充実させなければならないと言われた事があります。その時は、あまり気にもしなかったのですが、多分、こういう事かな、と思います。ハードはあるが、ソフトが無い。マリーナに居るだけでも、楽しめるという状況ができたら、きっと人口は多くなるんだろうと思います。

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