第九十二話 世界地図

トップページに世界地図を設けました。そこに、各造船所の位置を配しましたが、ヨーロッパとアメリカから、ヨットを輸入しています。これを見ますと、やはり日本は小さい。今度の原子力発電所の事故において、海外から見れば、日本のどこの事故だろうが、全体が危ないと見られても仕方無いのかもしれません。一般人の認識はその程度なのかもしれません。

今年、アメリカから客が来る予定でしたが、連絡があって延期となりました。福岡は何の影響もないのですが、そんなもの。東北も東京も、大阪も福岡も、同じようなもの、非常に近いと感じているようです。

そう言えば、昔ですが、車でロサンゼルスからサンフランシスコに行った事がありますが、その時にどれぐらいかかるか聞いた所、すぐそこという感じで、まるで隣町という感覚のようでした。でも、実際走りましたら、確か8時間ぐらいかかったかと記憶しています。彼らの距離感とはそんなもの。
大陸ですからね。

そういう感覚から言えば、福岡と東京とか、そんな距離は隣町程度の感覚になります。ヨットを運ぶ際、アメリカから日本までの輸送で、日本側の港が、神戸だ横浜だとか、そんな事をうるさく言いますが、向こうからしたら、どっちでもたいした距離では無いのかもしれません。感覚というのは恐ろしいものです。

世界をヨットで回る方々、日本人は少ないと聞きます。考えてみれば、距離感が違うせいもあるかもしれません。同じ距離でも、小さな国に住む我々日本人は、遠くに感じられるせいかもしれません。だから、世界に出るには、日本人の方が覚悟を必要とするのかもしれません。日本人にとっては遠いのです。

欧米人の使う世界地図は、日本が東の極にあります。その地図を見ている感覚は、日本は殆ど視野に入らない。中心はアメリカとヨーロッパという事になります。まして、一般人にとっては、日本がどこにあるか、中国との違いも解らない人達も居る。その程度です。

その小さな、目にも入らないような日本が、つい先日までは、世界第二位の経済大国でした。おまけに資源も無い国です。これは驚異的であります。おおいに自信を持ってしかるべきかと思います。中国に抜かれたからと言って、大騒ぎする必要も無いように思います。

その日本をここまで押し上げてこられた方々が、仕事を引退し、ヨットを始める方々もおられます。ただ、これまで仕事を一生懸命されてこられて、遊びは二の次として生きてこられた。もちろん、今日の感覚とは違います。でも、長い経験が染みついているはずです。習慣は簡単には変えられない。でも、これからヨットで遊んでみようとされる方々、是非、ヨットを楽しんで頂きたいと思います。
遊びは悪では無いと解っていても、なかなか切り替えは難しい。

本当は、その日の、その時の風を、あるように楽しむ事ができれば最高だと思います。しかし、なかなか染みついた意識は変えられない。ならば、セーリングを求めてはどうかと思っています。その中で、いろんな体験が積み重なり、自分なりのヨットライフが創造できるのではないかと思います。

世界地図を眺めてみますと、それだけでも、日本人とその他の国に住む人達の意識の違いが想像できます。我々の距離感が、世界を大きくしているのかもしれません。世界は大きくもあり、小さくもある。東京と福岡の距離が、そぐそこという感覚になれたら、日本人ももっと世界へ出る人が多くなるのかもしれません。事実は事実でも、その感覚の方が左右する。ヨットに対する感覚、遊びに対する感覚、風に対する感覚、それらの感覚を、もう一度意識してみるのも悪く無いかもしれません。事実よりも、それをどう感じるかの方が問題かと思います。

世界地図を設置したのは、その距離や大きさについての感覚を、もう一度意識してみようと思ったからです。

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