第四十一話 中古艇

経済の関係で、新艇の進水数はそう多くはありませんが、中古艇に関しては物不足という状況が続いています。新艇が毎年ある程度の数が進水していれば、それが順に、中古艇として出てくるわけですが、バブル崩壊以降、新艇の数は減り、従って中古も品不足が続いています。

そして、目立つのは20年以上、30年以上の中古艇です。しかし、まてよ、ヨットというのはそんなに持つのか?そういう事が知られてきました。という事は、考えられる事はひとつ。古いヨットのレストアです。こんなに古くたって、船体はしっかりしている。

比較的新しいヨットを望まれる方もおられますが、当然ながら価格は高い。従って、ここは考え方を変えて、古いヨットをレストアする手も大いにあり。それどころか、考えようによってはこちらの方が良い場合もあります。

10年物の中古は高い。でも、考えてみれば、計器類とか、そういう物は既に10年経ってます。では、20年物はどうか?価格は安くなります。でも、それで、計器類をすべて交換したりして、セールもハリヤード類も交換してしまえば、そういう消耗品的な物はすべて新品に換える事ができます。

船体がしっかりしていれば問題ないし、エンジンやウィンチなんかはもっともっと長持ちします。必要があればワイヤーのステイ、ライフライン、それらも全部交換しても良い。クッションだってカバーを張り替えても良いし、木部でもニスをし直しても良い。

そうなると、10年物のヨットと、いろんな物が新品交換されたヨットとどっちが良いか?もちろん、船によってはデザイン的な物ものもあります。あまり古さを感じさせる、それでもクラシック的な美しさとは違う。そういうヨットはどうかな?という疑問もわきますが、そういう状況が無い場合、それでも、価格が安く抑えられるのであれば、果たしてどっちが良いでしょうか? 船体だって、塗装しなおせば、ピカピカになります。

欧米では歴史が長いですから、古いヨットがたくさんあります。それでも、そういう古いヨットが現役で居られるのは、こういうレストアのお蔭ですね。それにそういう手入れされたヨットは価格も高く維持されています。こういう流れは、時代とともに必然的に起こってきます。

日本もどうやらそういう入口に入ってきたかと思います。実際、いくつもの艇のレストアをやりましたし、それらは今もきれいで活躍しています。それに幸いと言いますか、古い時代は建造に、今以上に手がかかっています。ですから、頑丈です。但し、走るという意味では、全体的にちょっと重めではあるんですが、クルージング目的であれば、良いかと思います。

以前、中古に関して、計器類等がついてるとか、ついてないとか、動か無いとか、そんな事を書いた記憶がありますが、20年物の計器が動いていようが、無かろうが、そんな事は重要では無く、いつ交換されたか? 20年前の物か?そういう事が重要です。古いなら、動いていても、交換してしまう。その方が新しくなって、これから先使えますし、日進月歩ですから、こういう電子機器類とかは新しい方が性能は良いし、価格も安くなっています。

そういう考え方を柔軟にして探せば、良い中古を手に入れる可能性もたかくなります。昔は、船齢によってある程度価格が決まりました。殆どのヨットの船齢が20年以内の時代です。程度の良し悪しは、あまり価格に反映されなかった。これは車の社会から来た考え方でしょう。 でも、その車10年経ったら価値が無くなる。だからそうなってしまう。

ヨットは20年、30年、40年、もっと使えるものです。それは船齢なんかよりも、状態がどうかの方がはるかに意味を持ってきます。10年物のヨットと、20年物のレストアしたヨットと、どっちが良いかとは、一概には言えません。これからは、そういう柔軟性を持って考えるのも手ではあると思います。

欧米では、住宅に関しても、中古住宅を売買するのに、日本人程の違和感は無いようです。それというのも、家が数百年持つからですね。英国の建築中の家があって、それはどのぐらい持ちますか? と聞いた事があります。その答えは400年ぐらいは持つとかいう返事でした。そういう土壌がある。

長持ちする物は、手入れ次第です。車のように10年で駄目となると、手入れよりも年数です。ヨットは車とは違う物です。船齢が無関係とは言いません。お蔭で、古くなると安くなります。でも、だからこそ、それを生かす手もあります。

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