第三十一話 何を味わう

遊びですから、何を味わいたいかになると思います。遊びで何らかの記録を立てようなんかは、もはや遊びとは言い難い。遊んで、そこから何を味わうかが、本来の遊びだろうと思います。

クルージングは、ヨットやボートを手段として、旅を味わう事が目的になると思います。その目的の為に、どんなヨット、ボートが良いのかと考えます。何人まで乗っても快適か、いち早く到着したい、船中泊のキャビンの快適性はどうか、時化た時はどうか・・・・・・

一方、セーリングを楽しむのは、ヨットそのものを楽しむ事になります。ヨットは手段であり、目的でもある。厳密に言うと、ヨットでは無くヨットの性能という事になるのですが、スピードなのか、乗り心地、加速感、滑らかさ、操作性、安定性、微風での走り、強風での走り、どんな感じを与えてくれるのか?

結局、何をしたいのかは、何を味わいたいのかという事になります。あの遠くに浮かぶ島に行ってみたいとか思います。島に行くのが目的なら、いろんな方法があります。でも、自分のヨットで行くところに意義がある。そう思うと、フェリーに乗って、行く気にはなりません。それなら、ヨットが良いか、ボートが良いかという事になります。

ボートの方が遥かに快適だろうと思います。しかし、それでもヨットで行きたいと思う人も居る。ひとつ不思議な事は、もし、ボートよりもヨットと思うなら、エンジンだけで行くというのはちょっと変かな?道中に、全部とは言わないまでもセーリングをしながら行くという事を考えた方が良いと思います。もし、エンジンだけで行くとしたら、ならば、ボートで行く方が良いと考えるわけです。そこは、あくまで手段となりますから、ボートの方が快適で、速いし、目的のあの島には到達できます。

ヨットは、エンジンが仮にトラブルになっても、セールがあるから何とかなるという考え方もあります。確かにその通りではあります。しかし、それだけの理由でヨットにする?ボートのエンジンでも、メインテナンスをちゃんと行えば、そうそうトラブルは無い。でなければ、これだけボートが多いわけが無い。

釣り好きな人は、兎に角釣りのあの醍醐味を味わいたいと思う。ですからボートで、速くポイントに走ってと思う。ですからボートでなければなりません。セーリングから得られる味わいは、もちろんヨットでなければならない。でも、クルージングという味わいは、ちょっと吟味してみる必要がある。

クルージングをする事によって、どんな味わいを得たいのか?クルージングというのは、大雑把な分け方なんだろうと思います。釣りやセーリング程、明確ではありません。ですから、もっと具体的に考えた方が良い。

クルージングでどこまでの範囲を想定するのか?近所に行くのと、沖縄や小笠原に行くのとでは、同じ旅とは言っても、実質的に違います。

どのくらいの時間が取れるのか?

何人で行くのか?

航程はどうするのか?

旅に行かない、日常はどうするのか?

どのくらいの頻度で行けるのか?

日本一周するにしても、ヨットでも、ボートでも可能です。この違いは何か?ヨットでなければならない理由は何か? ボートでなければならない理由は何か?

これらは、人それぞれに違う理由があって、違う味わいを求めます。ですから、何とも正解は出せないのですが、外洋の旅は別にしても、沿岸の旅であるなら、ひとつの考え方として。クルージングはより安全に、快適に、安心して旅を味わいたいと考えます。ヨットとボートの違いは、その航程にあるのではないかと思います。その航程が目的地程重要で無いならば、ボートもあり得ると考えます。その方が快適だし、速い。

ただ、旅以外の事を考えた時、日常にセーリングを楽しむなら、これは話は別になります。でも、多くのクルージング艇が、滅多に動かず、でも、クルージングでどこかに行きたいと思っているなら、ヨットである理由は絶対では無いようにも思えます。

ヨットの特徴、ボートの特徴、それらと、自分の求める味わい。これらは、どんな風に組み合わせても良いのでしょうが、最低限、どんな組み合わせであろうが、自分が解っている事が必要ではないかと思います。でかいヨットで、普段は簡単には動かせない。滅多にクルーも来ない。それでも、それが解って、年に1回のクルージングが楽しくて、というなら、解っているならそれで良いと思います。そして、それは、解っているいるからこそ、いつかは変わるだろうと思います。変えようと思う日が来ると思います。

ちっとも使わないのに、毎年係留費とメインテナンス費用だけ支払う。解っていれば、今はそれも仕方ないと思うかもしれませんし、手放す事を考えるかもしれませんし、クルーを集めようと思うかもしれないし、買い替えてと思うかもしれません。今がどんな状態であれ、それを解っているという事が必要かと思います。今は、それを味わっている事になります。その味わいが、求める味わいなのかどうか?解れば、そう考えるようになるかと思います。

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