第二十三話 デザイン

想像ですが、昔はヨットはどうあるべきかという観点でデザインされてきたのではないか?海がどうあるから、風がどう変化するから、ヨットはこうあるべきだ。

船体の形状は昔はロングキール、それが研究開発が進んで、フィンキールになっていく。それは、その方が舵効きが良く、しかも安全面においても問題無いと解ってきたから。ロングキールのメリット、デメリット、フィンキールのメリット、デメリット、そういう事が解って、いろいろ変化してきています。

船体のデザインしかり、安全性、性能、そういう面で、ヨットはどうあるべきかという観点で進化を続けてきたかと思います。それが、ある時点から、人間の都合というものが出てきて、海に対するヨットはどうあるべきかとは別な観点が生まれてくる。

船体強度は外洋に行かないなら、そこまで頑丈では無くても十分。それに軽い方が速く走れるし。
幅は広い方が、フリーボードも高い方が、広いキャビンを確保できる。コクピットは広い方がたくさん座れるし、メインのトラベラーもここに無い方が邪魔にならないし。いろんな人間の都合で変わります。

これが駄目だという事では無く、ヨットがこうあるべきという観点は、自然を見てきた結果だろうし、それがだいたい解ってきて、今度は使う人間がどういう使い方をしているかという観点で見て、ならば、こういうヨットが良いんじゃないか、という変化に変わってきた。最初は性能面を見、次には人間を見た。

性能的はこうあった方が良いというのがあると思います。しかし、使う側の都合で、こういう風に変えた方が良いんじゃないか、多少、性能が落ちたとしても、許容範囲内であるという風に変わってきた。それはそれで良い。使うのは人間ですから、全てのヨットが外洋艇である必要もありませんし。

そういう事で、ヨットはいろんなジャンルに分かれていきます。技術開発と伴に。という事は、昔はヨットはこういうもの、というのがあったわけでしょうが、現代はいろんな物があるわけですから、それもあるひとつのジャンルの中でも、いろいろあるわけですから、それこそ使う人間の側が、使い方を十分知る事が、楽しむ為のコツであるという事になっていきました。サイズを選ぶだけでは無く、いろんなジャンル、いろんなヨットという事で選択の幅は広がっていきます。

しかも、これから先、もっと注意して見れば、もっと細分化されていくかと思います。クルージング艇と言っても、外洋と沿岸という分け方だけでは無く、もっと注意して見れば、その中にもいろいろあって、使い方次第では良くなり、使いづらい事も出てくる。

そういう意味では、使う側が、もっと使い方について考慮しなければならないのかもしれません。ヨットはどんどん変化していっていますから、我々も変化、進化しなければならない。という事は、より自分に合うヨットを見つける為には、具体的な使い方を考える必要があります。

最低限、通常では何人で乗るのか?クルーなのか? ゲストなのか? クルージングも、どこまでの範囲を想定するのか?ヨットに泊まるか、泊まらないのか?どのくらいの時間が取れるか?
そもそも旅がしたいのか? セーリングをしたいのか? これらは、実際に運用していかないと解らないのかもしれません。

それなら、実際に遊びながら、そういう事を考えて、次のヨットに反映する。ひとつのヨットで終わらないのが一般的でもあります。ちゃんと見ていれば、どんなヨットが自分に合うのかが解ります。ただ、買い替える度に、サイズアップだけでは無く、サイズダウンもあり得るし、ジャンルが変わる事だってあり得る。現在の沿岸用クルージング艇はキャビン拡大競争をやっているように思えます。
あるひとつが強調されると、それに伴い、別な要素が出てくる。そこまでして、大きなキャビンが必要か否か?

レースを楽しむも、本格的か、或いは、たまに楽しむぐらいで良いか?実際に、運用してみないと解りませんが、そこを良く見る必要があると思います。多くのヨットが、滅多に使われない状態であるという事実は、どこかがおかしいのではないか?所有だけで満足できるのは最初だけ。それをどう運用すれば、もっと面白いのか?

デザインは、これでもかと、どんどん変化して投入されていきます。車と違って、舗装道路という固定された場所を走るわけではありませんので、必ず、何かが出れば、何かが引っ込む。本当に、心から面白いと思えるような時はどんな時か?ヨットは遊び、しなければならないものではありませんから、ワクワクするようなフィーリングを得る事が目的ですから、自分のワクワクはどこにあるのかは、いつも考えておいた方が良いのではないかと思います。

但し、それは理屈では無い事もあります。ですから難しい。でも、自分の感じている事に注意すれば、自分の方向性が解るのではないかと思います。滅多にゲストは来ないけど、でも、その滅多に無い時に備えておきたいという事もあるでしょう。普段の使い方を優先した方が良いと思いますが、でも、人間ですから、それが解ってそうするのなら良いかと思います。ただ、何となく、他と同じようにでは無く、解ってやる事が大事かなと思います。

見た目の美しさが気に入ってという事も大事な事ですが、でも、その後の運用はもっと大事です。
何しろ、この先ずっと使うわけですから。ヨットは美しくなければならないと思いますが、使って、面白いものでもなければならない。デザインは見た目ばかりでは無く、その中身を良く吟味する必要がありますね。

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