第六十三話 コミュニケーション

ヨットの業者として仕事をするようになって22年になります。当時は、日本はファックスが当然ありましたし、アメリカも同様でした、しかし、一部のヨーロッパ企業ではファックスでは無く、テレックスを使っていました。非常に面倒くさい作業でした。結構、大手の造船所でも、テレックスでしたね、当時は。

それから、ヨーロッパでもファックスが導入されるようになりましたが、現在は当然インターネットを使ったE-MAILが普及しましたので、通信に関しては非常に便利になりました。仕様の確認とか、パーツ等の間違い等の確認も、昔に比べれば容易になりました。写真で確認もできますし。そういう時代です。

パーツ輸入に関しては、このメールの登場の他、国際宅配便の発達という恩恵があります。昔は、かなり時間がかかったりもしましたが、今日では、在庫さえあれば約1週間で到着します。便利になったものです。

世の中のシステムは、どんどん発達していき便利になってきました。でも、どんなに便利になろうが、働くのは人間です。今も昔も、通信も手配も人間がやってます。システムが発達したとはいえ、やるのは人ですから、何事も人次第ですね。

部品の間違い? これは現在はほとんどありません。ただ、極力、あの手、この手を使って間違いの無いように確認はしています。それから、先方の担当者が送ったと言いながら、全く届かない。そういう事もありました。担当者は配送部署に送れと命じ、配送係が忘れていたとか? こういうのは日本では無いと思いますが、海外では、部署がタテ割りと言いましょうか、担当は配送命令を出せば、その人の仕事は終わり。そういう感じですね。ですから、今では、配送した伝票を送らせて確認をとったりします。 レギュラー的に取引がある会社ではそういう事はありませんが、単発的に部品を頼まれるような場合は、特に注意をしています。

ヨット本体に関しては、これまでの経験上、通信の悪い会社はアウトとしています。例えば、信じられないかもしれませんが、メールを送って、何度も催促して、全く返事が来無い。そして、1ヶ月ぐらいたった頃に、先日のメールがどうこうという返事が来た事もあります。こういう会社は論外です。どうしても、その会社から部品を取らねばならないなら、電話する事もありますが、そうでも無い場合は、電話はかけません。通常の手段で、通信が良いかどうかの確認でもあります。

或いは、販売時は通信が良くても、販売後にいろんな質問をしたり、クレームだったりすると、通信が悪くなる。これも論外ですね。どんなに良いヨットを造っていたとしても、アウトであります。

まあ、先方もいろんな事情はあるとは思いますが。例えば、その造船所のある国が大きな市場を持っていたりしますと、輸出という事を考えていない。従って、輸出の仕方が解らない。そういう事で、時間がかかったりという事もありました。そういう時は、輸出の仕方から教えるという事もありました。まあ、いろんな経験をさせて頂きました。

やはり、原則として、ヨットは良いヨットでなければなりませんが、その上に、通信が良い事が絶対条件だと思っています。通信が悪いというのは、最悪です。現在は、その通信手段がよくなりましたから、そこで働くスタッフ次第という事になります。良い造船所は、通信は良いし、向こうからも、いろんな確認をしてきます。そうなるとこっちも安心できます。

出したメールを受け取ったのか、受け取っていないのか、そして何日も返事が来無い。或いは、メール受け取りましたが、調べるので少し待って下さい。そういう返事をしてくれる造船所もあります。また、このオプションを設置してほしいと言えば、ふたつ返事でOKと言ってくる。これは良い場合もありますが、仕様とか、その後の事とか全く考えないでそういう返事をする造船所もあれば、否、
それより、こっちの方をすすめますとか、それは設置しない方が良いとか、何故なら云々という返事をしてくる造船所もあり、各社各様です。

長い付き合いをしますと、先方の担当者とも気心が知れて、いろんな話をする事もあります。ビジネスライクとは言いながらも、やはり人間ですから、人と人とのコミュニケーションが大事だな〜と痛感します。それがビジネスには欠かせない。

世界のマーケットにおいて、日本のマリン市場は非常に小さい。ですから、造船所の担当者の立場に立てば、年間においてたいして販売艇数が無い日本に対し、どれほど一生懸命にやってくれるかという事があります。しかし、そこを何とかするのが私の仕事です。

海外の事ばかり書きましたが、我々自身についても同じ事が言えますので、あらためてコミュニケーションについては、極力注意して、良いコミュニケーションをと心がけたいと思います。

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