第五十五話 ハイ&ロー

ヨットには様々なハイテク技術が使われています。しかしながら、一方ではシンプルなローテクも多い。ロープ素材にはハイテクが使われていても、ロープはロープ、辿って行けば、どこを通って、どうなっているかぐらいはすぐにわかります。

自分のヨットを、隅から隅まで、クッションの下まで、覗いて、ひとつひとつがどうなっているのか是非見てください。見れば、大抵の事はわかります。何本も走るロープ、それぞれの役目があります。それもどこから始まって、どこを通って、どこにつながっているか?それを引けば、どこがどう動くのか? 見れば、それがよくわかる。解れば、何か不都合な事があった時、どこが原因なのかと想像する事ができます。それに、そのロープの役目も良く解る。

清水のホース類、タンクからギャレーまで、途中にポンプやアキュムレータータンクを経由していきます。ひとつひとつが何なのか、何をしているのかを知って、配置、配管を知れば、何かがあったとき、すぐに解かるし、何かを調べたい時も、順にどこを見ていけばいいかも解ります。すべてを見れば、部品の役目と、配置等を知れば、それだけでもかなりの事がわかります。

もちろん、目で見て解らない電気とかの事もあり、エンジン等は専門知識も必要ですが、それらは徐々に学ぶにしても、他の多くは常識的な頭で見れば、理解できる事ばかりです。その事で、多くのトラブルを自分で解決できるようになります。そうなればこころ強いかと思います。自分で知ってるほど安心な事はありません。安心してセーリングができます。

そして知れば、セーリングする際にも、理解はしやすい。ハイテク技術の構造なんか知る必要もありませんが、ローテク部分は是非目で見て理解してください。操船技術も大事ですが、自分のヨットを知る事も同じぐらい大事な事かと思います。航海計器にはコンピューターが使われますが、その他は大抵はローテクです。

ヨットの構造が解り、艤装品の役目が解り、配置が解ったところで、何かが発生する時、どこをどう見れば良いかが解ります。結果に対する原因の究明が容易になります。よくある話が、ビルジに異常に多く溜まった水。排水すれば良いという問題では無く、原因を追求しなければなりません。それがもし海水なら、これは急ぎます。もし真水なら、緊急性は無い。混ざっている事もあります。
これらは、普段から注意しておかなければなりません。

前回乗って、その後雨も降らないし、それで多くの真水が溜まっているとしたら? 前回乗った時にはどの程度溜まっていたか? つまりは、いつも注意していなければなりません。その水が海水だったとしたら?

ギャレーの蛇口から水が出ない? 排水しない? 水を出していないのに、いつまでもポンプが止まらない?

多くのちょっとしたトラブルが、知る事で大抵は解決できます。そして、他のヨットも、でかいヨットでも、基本的には同じようなシステムです。是非、ソファーの下を覗いてください。

こうなりますと、荷物がたくさん有り過ぎますと、覗くのが面倒に思えます。従って、必要な物以外は下ろして、できるだけ荷物は少なくしたいものです。

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