第四話  セーリング再考

神奈川県の油壺京急マリーナでアレリオン28の艤装をしている最中、たくさんの方々がアレリオンに興味を示して頂きました。ちょうど、週末でもあったわけですが、こちらは、艤装に忙しくて、全てに対応はできませんでしたが、少なくとも、デイセーリングというコンセプトには、気軽さがあり、多くの動かないヨットもある中、気軽なセーリングを楽しめるというものがあります。

クルーを従えて、レースに出る。仲間を集めて、クルージング。そういう使い方も楽しいのですが、全国的にはクルー不足。さらに、クルージングとしても、その日帰りの場合は、近くに寄るところもそう多くはありません。それでか、マリーナ近くでアンカーを降ろして、そこで海水浴とか、おしゃべりとか、そういう楽しみ方をされる方々も多かった。

そこで提案はやはりセーリングなのです。セーリングそのもののフィーリングを楽しもうというわけです。レースでも無く、クルージングでも無く、セーリングであります。そうならば、セーリング自体が面白いものでなければなりません。その面白さには、スピードもあるでしょう。でも、重要な事はそのセーリングから得られる感覚です。

感覚は全てに及びます。セールを上げる時、舵を操作する時、シートを操作する時、何も操作しない時、全ての瞬間に、あらゆる感覚を得ます。これらの感覚というのは、キャビンで食事したり、おしゃべりを楽しんだりするのとは、また別のものです。快走セーリングだけが面白いのでは無く、あらゆるところに、いろんな感じを得て、風が変化し、そこの対応していく時、またその瞬間瞬間にいろんな感じを得ます。それが面白いものと感じるか否か?

セーリングを気軽に楽しむ事ができるのなら、どこかに行く必要も無く、どこかに寄る必要も無く、セーリングという、セーリングでしか味わえない感覚を楽しむ事ができます。そして、このセーリングに面白さを感じるようになりますと、きっともっと深く味わいたくなります。自分の感覚も進化していきます。微妙な違いも感じられるようになります。それがまた面白さになります。

セーリングをレーサーの為だけにするのはもったいない。セーリングは勝つ為だけにあるのでは無く、楽しむ為にもあります。風が弱い時、強い時、波がある時、無い時、いつもそれなりに、その時々のセーリングを楽しむ。

それによって得られるものは、セーリングの知識だけでは無く、自分の感覚と、その感覚の変化、進化であります。味わったその瞬間で終わるわけでは無く、それが長い年月において積み重なっていきます。その積み重なる様は、本人にしか解らない味わいかと思います。頭で得たものでは無く、肌で得たもの。

うまいとか、へたとか、速いとか遅いとか、そういう事とは違うフィーリングの世界。これこそ目指す、自由自在感、一体感、面白さとは、こんなところにもあると思いますね。セーリングは、トータルでフィーリングを楽しみ、そのフィーリングが積み重なったいつか、自由を感じるようになるのではないかと思います。

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