第三十七話 あれも、これも

昔のあれも、これもは必要な物を指していましたが、最近では、あれも、これも要らないという方々が徐々に増えてきたように思えます。実際には使わないという事が分かってきた。あれば、メインテナンスも必要になります。ならば、最初から無くても良いという考え方です。そうなりますと、気持ちも楽になります。

冷蔵庫、温水、シャワー、大きなキャビン等々、これらは、ロングのクルージングに行った時には重宝するかもしれませんが、何日もヨットに泊まるという事が無い限り、あまり使う事は無いのではないかと思います。

そういう意味で、デイセーラーには、これらの装備がついていない。無くても良いと、自ら思えるならば、こんな気楽な事はありません。あれも、これも必要だと思ったなら、その分負担も大きくなる。
アレリオンというデイセーラーを販売してきましたが、これまでに、ギャレーがほしいと言われた方は一人もおられませんでした。寝る所、座る所、それにトイレがあれば十分という方ばかりであります。

これはデイセーラーという性格上、そういう事になりますが、でも、実に多くのヨットがデイセーラー的使い方をされていると思います。荷物を降せば、楽になる。気分が楽になるという事ですね。
水もコンロも、必要な時だけ持ち込む事ができます。冷蔵庫だって、小さな、その日の分だけ入るソフトタイプのアイスボックスをコクピットに置いておくと便利であります。

キャビン内が気楽になったところで、セーリングは充実させたい。何しろ、これが本来の使い方ですから。しかも、操作性良く、操作自体を楽しみ、その結果である走りを楽しむ。キャビン内よりも、コクピットに居て、充実感を得る。そのほうがどれ程面白いか、と思います。楽しいでは無く、面白いです。面白さは楽しさをはるかに越えています。

キャビンがどれほど充実して、宴会して楽しいかもしれないが、面白さには叶わない。クルージングの面白さは、旅にある。行った先々にある。だから、旅に出ないと面白くない。

結局、旅に出るか、セーリングを遊ぶか?どちらを優先するかによって、仕様は変わる。これらふたつのヨットは、同じヨットと称しながら、異質なものになり、それが昨今では、さらに顕著になってきています。

つい先日の方は、トイレも不要と言われました。考えてみましたら、何もないのいは、何も壊れないし、気にする必要も無い。こんな気楽な事があるでしょうか?最低限で良いという考え方。これは誰かが押し付けるものでは無く、自らがそう思わないと、気楽さの効果が薄れてしまう。

こういう割り切り方は、実は簡単ではありません。考えれば、考える程に、必要な物が増えてくる。それをそうさせないのは、やはり経験から来る自分スタイルの確立という事になりますね。それができると、考えている時に、これも不要、あれも要らんと、自らが思えるようになると、実に気が楽になります。物がある程、そこにエネルギーを注ぎ込み、少なくなるとその分、エネルギーが余ります。その余ったエネルギーがあればあるほど、セーリングを楽しむ事ができるような?

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