第三十四話 アレリオン33Sの魅力

経済の停滞にも拘わらず、アレリオン33Sがアメリカで良く売れています。このモデルは今年デビューしたばかり、発表時には既に3艇の注文が入っていたそうですが、それから数カ月。実は、先月に日本第一号艇を発注致しました。建造の順番待ちで、約1ヶ月と少し経ちましたが、いよいよ建造開始となります。そのハルナンバーが#30でした。

量産艇なら何でも無い数、当たり前の事かもしれませんが、アレリオンのような艇としては、この数はすごい数です。その人気ぶりはどこにあるのか?

推測しますに、セーリングを楽しむなら、速い方が良いという事だと思います。しかし、その速いヨットなら、他にもいろいろあります。しかし、問題はクルーだったり、複雑な操作だったりです。アレリオン33Sの特徴は、あくまでレーサーというコンセプトでは無く、デイセーラーです。つまり、セーリングをシングルハンドをも容易にしたうえで、速いセーリングという事です。

ファーリングのセルフタッキングジブ+ジブブームを使い、大きなローチを持つメインセールを使う。ハルの低い重心に加えて、41%のバラスト比、SCRIMP工法の堅いハル、イージーなハンドリングにスムースな乗り心地。シングルでも簡単です。ジブブームのおかげで、フリーもそのままジブとメインだけで走れます。シングルハンドなら、これで十分。

せっかく速いヨットですから、通常はシングルにしても、誰か、セーリングがわかっている人が来たなら、ジェネカーを使ってみる手もあります。これはこれで、ジブブームを使ったメインとジブだけのセーリングよりも、エキサイティングになります。もちろん、レースに出ても良い。

我々が日常的にヨットを楽しみたいと思う時、確かに大きなキャビンや装備は魅力的です。しかしながら、一方では、気軽さがあり、遠くに行く暇も無いとか、たまに遠くよりも、もっと気楽にしょっちゅうセーリングを楽しめる方が良いとか、そういう考え方もあります。

難しい事しないで、ひとりでも、気楽に自分のヨットを出してセーリングを楽しんでこれる。それはとっても良い事ではないでしょうか?もちろん、ゲストに誰を招待しても良いし、或いは、ヨット仲間が一緒に乗るなら、ジェネカーを使い、レースを楽しんでも良い。そういうヨットです。でも、レーサーというコンセプトではありません。そこが人気の秘密ではないかと推測しています。

考えてみますと、こういうヨットは過去にはありませんでした。速いヨットは操作が大変、クルーもたくさん必要でした。そこまではしたくない。でも、速いというのは面白さのひとつですから、それは味わいたい。そういう方々が潜在的にたくさんおられるのだと思います。

通常の他のアレリオンモデルも、いい走りをします。でも、この33Sタイプはさらに性能をアップさせました。しかも、シングルのイージーハンドリング。そこが魅力かと思います。

 

次へ       目次へ