第十八話 バリエーション

クルージング艇を手に入れたからと言って、そうしょっちゅうどこかに旅に出るという事もありません。逆に、デイセーラーを手に入れたからと言って、いつもセーリングに夢中というわけにもいきません。人間は気分が変わるものですから。

それで、どちらのヨットにしても、バリエーションを考えます。クルージング艇でも、一緒に乗った人次第では、今日はセーリングを重視して、走ってみるとかです。デイセーラーだって、1泊程度のクルージングはできます。或いは、ゲストに楽しんでもらう事を主にしたり、沖に出てアンカー打ってみたり、デートセーリングしてみたり、決して、これらが主にはなりませんが、バリエーション、ちょっとした塩、胡椒の類のバリエーションです。こういうのがあってこそ、主がまた活きる。

主はどう使うか?これがオーナーのメインディッシュです。でも、時に、それに前菜を加えたり、ちょっとお酒飲んだり、スープや食後のコーヒーなんかもあるわけです。これらは、メイン程重要ではありませんが、無視できないものです。メインを引き立てます。

もちろん、メインの使い方にも、いろんなバリエーションがあります。そこを遊べると、面白さはもっと大きくなるでしょう。でも、それでも、人間の気分は変わるもの。そこに、バリエーションを与えて、
ちょっと違う気分を味わってみる。長い年月ですから、そういう事もしょっちゅうあるでしょう。

で、まず何を? いつも言いますが、その気分を意識する事ではないでしょうか?どうも、今日は気分が乗らない。なら、奥さんを誘ってみる、子供、孫、友人、彼女、誰でも良いんですが、ちょっと目先を変える。何となくではなく、ちゃんと自分の意識を意識しての事。

自分の意識は常に変わる。そこが問題です。いつも同じなら、何てことは無いのですが、いつも変わるので、どう変わったかを意識する。今日は赤い服を着る。明日は青を着たくなるかもしれません。ラフな格好、きちんとスーツを着たり。

ヨットをその気分で変える事はできませんが、使い方を変える事はできます。そして、その気分の変化をちゃんと自分で意識している。そんな事を続けたら、本音の部分で、自分の心の移り変わりが良く解るかもしれません。すると、本当は最もしたいのはこれだとか、あれだとか、何に最も惹かれるかも意識的に解るかもしれません。

意識して主を楽しみ、意識してバリエーションを楽しむ。意識して乗らない日もある。意識してメンテナンスをする。意識してさぼる。意識していますから、自分のスタイルが良く解る?そうすると、どうしていきたいかも、明瞭になる。すると、どんなヨットが自分に合うのかが良く解る。多分?

現実を見ないで、想像だけしますと、いろんな楽しみ方が想像できます。しかし、これは殆ど妄想に過ぎない。殆ど有り得ないし、あっても、年に1回とか。そんなこんなの現実を体験しながら、漫然と過ごしたのでは、いつまで経っても、同じ事の繰り返し。ですから、意識する。現実と、自分の移り変わりを意識する事で、何かが見つかるかもしれません。今、やってる事にどう感じているか?

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