第七十八話 楽しむ為に

楽しければ楽しい程、苦労もある。それが当たり前で、それではと何もしないなら、もっと嫌な退屈感がやってくる。やっかいなものです。楽しい時には舞い上がり、上手く行かないと落ち込んで、そんな事の繰り返し。

ちょっと考えて見ますと、全ては流れている事が解ります。楽しい事があり、それで終わらないで、続きます。それで嫌な事があり、それでも終わらないで、続きます。まるで、連続ドラマのように。
何かあると、続くと出るわけです。

何かを成し遂げても、やはり次の日もある。どんなに舞い上がっても、次が来る。どんなに落ち込んでも次が来る。終わる時は死ぬ時にしかやってこない。ひとつひとつに一喜一憂するのも手ではありますが、ちょっと一歩下がって、全体の流れを見てはどうでしょう?

何かを成し遂げて、それを見て、うまく行かないことを見て、また続く流れを見る。これは考えようによっては、最も面白いドラマかもしれません。次に何がやってくるのか?いちいち舞い上がったり、落ち込んだりしないで、全体を流れとして楽しむ事はできないか? 映画を見てるようなものです。

今はうまく行っても、次は解らない。今はうまく行かなくても、次は解らない。流れるから面白いとも言えます。止まってしまうと、ちっとも面白く無いのです。楽しい場面が続くなら、それはやがては退屈感に変わり、楽しく無い場面も、変化せずに続くなら慣れてしまう。これは最も嫌な退屈感を誘うことになります。

そう考えますと、全ては流れるから面白いと考える事もできます。快走セーリングから無風セーリングがり、強風があり、乗れない日があり、いろいろあります。ひとつひとつを取り上げると、一喜一憂する事になりますが、全体を眺めて、全体をある方向にもっていくという面白さを得る事もできるのではないか?

セーリングに自由自在感を求めるとしたら、何度も乗ります。その流れは、いろいろあります。しかし、全体の流れは、求める方向に向かうでしょう。すると、全体をひとつのドラマとして、映画を見るように楽しむ事ができないか?

知識不足の自分を見て、知識が増える自分を見て、うまくいかない自分を見て、腕が上がっていく自分を見る。いろんな状態があるわけですが、そういういろんな味わいを持つ自分を見て、その全体の流れを楽しむ。ちょっと引いたクールな感じですかね。一体次に何が起こるだろうかと、待つ。

問題は強風に翻弄されるような事がある時、そんな風に考えられるかどうか?快走に夢中になっている時に、そんな風に考えられるかどうか?全ては長い流れの一部とクールで居られるか?
やがては変わると思えるかどうか?

もし、それができるなら、これぞ本当の面白さとして楽しむ事ができるのではないか?ヨットをどんな風に扱っても良いわけですが、全体の流れをどうするかを決めて、それを楽しむ方法はこれしか無い?すると、トラブルがあっても、最高のセーリングを味わっても、何があっても全体の流れとして楽しむ事ができるのではないか?

この場合の楽しむとは、普通の楽しみとは違う。心躍る事ではありませんが、でも、全体の味わいとしての楽しみと言いますか、まるでこれはゲームのようです。こうきたか、じゃあ、こうしようてな具合です。

細かい事は別にして、方向性を決めましょう。ヨットを最終的にはどうしたいのか?今はどうであれ、最終的にはどうしたいのか?いつも、その方向性を携えて、忘れずに、そして今できる事をする。その今できる事は、必ず方向性としては、思う方向に向かわせる。そういうドラマを演出しながら、一生かかってヨットドラマを作るわけです。

ここに失敗はありません。何故なら、方向性はあっても、到達点は設定していないから。到達点は終わりを意味します。方向性は流れを意味します。それで、全てはゲームとなり、全てはプロセスであり、そして全ては味わいとなる。

是非、自由自在のセーリングという方向性を持ってはいかがでしょうか?自由自在には具体的な終わりが無い。あるのは味わいです。だからこそいつまでも楽しむ事ができるのではないかと思います。どこかに行こうと思ったら、行けば終わります。でも、次の日もやってくる。ですから、目的地では無く、旅を味わうという方向性を持つ方が良いような。

そして本当に終わる時、どれだけの味わいを得てきたか?味わいが目標として意識されてきたわけですから、相当な味わいを得たはず。それと同時に、やはりたくさんの達成も得たはず。
これはひょっとしたら、最高の楽しみ方かもしれません?どうでしょう?

デイセーラーを日本に普及させたいというのが私の方向性です。これに100艇進水させるとか考えますと、必死にならなければなりませんし、楽しむなんて事はできません。でも、ひとつひとつ増やしていくなら、そのひとつひとつにはいろいろあるでしょうが、全体の流れとしては、楽しみながらできるかも?そして終わる時はどうなっているか?

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