第六十九話 デイセーラーの出現
| これは時代が生み出した自然の流れのひとつではないかと感じています。先日、あるクルージング艇のオーナーが、以前はクルーが居たけど、今は居無いので、風向きや強さによっては、ひとりでは出しづらいという話を聞きました。また、ある方は、やはりクルーが居無いという事で、しばらく乗らず、結局はやめてしまうことになった。全てはここに象徴されるような気がします。 キャビンがでかすぎて、ボリュームが有り過ぎ。クルーが居た時にはそれで良いが、クルー不足の今日では、それが難しい。それによって、乗るチャンスが減少していきます。天候に左右されるのは、ある程度は仕方無いのですが、それでも左右され過ぎかもしれません。せっかく、良い天気なのに。これじゃあ、一体ヨットって何なんだ。 そういうヨットを尻目にデイセーラーはシングルでも、平気で出て行きます。我々が今必要な事は、平気でヨットをシングルで出して、そこらで気軽にピクニックセーリングが遊べる事ではないでしょうか？日本一周ができる、外洋が走れるとか言う事では無く、簡単に誰もがピクニックセーリングを楽しめる事ではないでしょうか？ 大きなヨットでも、ひとりで出せる人はそれでも良い。しかし、多くの場合、そうではありません。例に上げた通り、多くの場合では、シングルでは難しく思えます。これでは、誰かを気軽に誘う事さえできなくなります。 クルー不足は欧米でも同じと聞きます。動かないヨットが多くなったとも聞きます。そういう時に、デイセーラーが出てきた。これは必然ではないかと思います。 昔はクルー不足なんてありませんでした。ヨットに乗りたい人は多かった。でも、今は違います。クルーを見つける事は難しい。せいぜい来ても、ゲストです。おまけに、昔より、ヨットは横に縦にでかくなってしまいました。ますますクルー無しでは乗りにくくなってしまったと思います。同じ３０フィートでも、昔と今ではボリュームがぜんぜん違いますね。後ろから見たら、何フィートか解りません。 何度も言いますが、クルージング艇は旅をするもの、それも何人かで。日常に気軽に使えるものでは無くなってきた。クルーさえひとり居れば、今でも気軽にピクニックに出れるものです。でも、今はそれが難しくなってきています。 何故、クルー不足になってしまったのか？クルーは大抵はオーナーより若い人達です。４０代、５０代でも良いでしょう。でも、ヨットに実際乗ってみますと、最初はピクニックでも良い。どこかに上陸して飯食っても良い。でも、毎回、毎回そうなら、それも面白さが無くなります。転勤とかでやむなくクルーができなくなる事もあるでしょう。でも、多くの場合、ヨット遊びが面白いものでは無くなってきたのではないか？それはみんな面白いと感じる目標が無い、何となくになってしまったからかもしれません。 最も簡単に面白さを味わう方法は、レースに出る事です。そういう意味ではレースもお奨めであります。ローカルの毎月１回のレースに出る為に、日常的にも練習したりするのも面白さのひとつかもしれません。その隙間にピクニックすると、それも楽しさとして受け取る事ができる。 そして、もうひとつは、クルー不要で、セーリング自体を楽しむ事。そこにデイセーラーが出てきた理由があると思います。これはクルージング艇のセーリングとも違う。より敏感に感じる事のセーリングだからこそ面白さがある。セーリングに面白さを見出そう。セールフィーリングを取り戻そう。そう言いたいわけです。 そうやってオーナーがセーリングを楽しむようになると、きっと今度はクルーが現れてくるかもしれません。ヨットが面白くなってくるからです。欧米ではそうやって、デイセーラーだけのレースなんかも出てきます。 これからは、旅を中心にヨット遊びをするか、或いは、セーリングを中心に遊ぶか、選択の時ではないかと思います。残念ながら、デイセーラーが安くは無いので、すぐに広がる事は無いでしょうが、でも、流れはそういう方向ではないかと思う次第です。 ですから、デイセーラーと称するヨットで無くても、シングルで帆走を楽しむ事ができるヨットというテーマが我々の次のステップではないかと思います。 ４０フィートオーバーを平気でシングルで出す人を知っています。これは個人差がありますが、シングルで出せれば、いかようにも遊ぶ事ができます。ピクニックもセーリングも、旅だって可能です。 これからのキーワードはシングルハンドかもしれません。そのうえで、ピクニック、セーリング、旅を楽しむ。デイセーラーの出現は、このシングルハンドを簡単に可能にした事かと思います。しかも、同時にセールフィーリングを求めた。セーリングは動けば良いというものでも無い。どんな感じ？ はとても重要なのだと思います。 |