第二十六話 ちょっとそこまで

舵社の次号は”船乗りなら、旅に出よ” だそうです。旅も魅力的ですが、ヨットに関しては ”ちょっとそこまで” というのも良いもんです。以前から、こういう気軽さがほしかった。この言葉には、たいそうなニュアンスはありません。気負いも無い。すごい事しようという事も無く、ただ、そのあたりを散歩してきます、という感じです。一日中走り回るという感じも無く、ただ、その日の風の具合を味わってくれば、それで良い。そんな気軽さ、気楽さを持っています。

もし、幸運にも家がマリーナに近いなら、早朝のジョギングならぬ、セーリング。確か、誰かそんな事やってた人が居ました。みんなが来る頃には、マリーナに帰ってきて、ゆっくり朝のコーヒーなんかいただいて。

もし、家が遠いなら、早朝は無理でも、夕方にちょいと、夏ならその方が涼しいし、サンセットセーリングで夕焼けがきれいだったり。そんな、しゃれた使い方も良い。

ヨットはたいそうな乗り物かもしれません。しかし、乗り方までたいそうにする必要も無い。知識も技術も必要ですが、そんなテクニックを駆使する場面も面白いのですが、状況によっては、ゆったりした気分も悪く無い。

早朝にセーリングしたら、まだまだ時間はたっぷりです。これから、別な事もできますね。マリーナでゆったりしていても良い。場合によっては、もう一回セーリングしてきても良い。それぐらい気軽さを持てると良いですね。

その為には、簡単に出港できるようにしておく必要ああるし、自分のヨットを楽に操船できるようにしておく必要がある。間違えてはいけないのは、ひとつひとつを楽に操船できるようにであって、できるだけ操船しないで良いという事ではありません。操船する事が遊びなんですから。操船したくないなら、人のヨットに乗せてもらう。これなら何にもしなくて良い。でも、そうじゃないですよね。

ちょっとそこまで、という気分で、海を見に行く。ちょっとそこまで気分で、沖でおいしいコーヒーを頂く。特別な何かをしにいくというのでは無く、ただぶらり。

運が良ければ、良いセーリングの気分も味わえる。覚えたての知識も試すこともできる、気分さえ乗れば。でも、必ずしも、何かをしなくてはならないわけじゃない。

知識も技術も習得した方が面白いには違いない。しかし、人はいつも曖昧で、気分はうつろい、気分が乗らない事もある。それで、基本的な乗り方としては、ちょっとそこまで気分がベースにあった方が良いかもしれません。

それで、もし、その日、良い風が吹いて、気分が乗ってきたら、スポーツセーリングに切り替えても良いし、漂っても良いし、自分の気の向くままに遊んでも良い。いつも同じなら、人は何か刺激を求めます。そういう時はスポーツセーリングして、その緩和には、気楽な気分を持つ。

ちょっとそこまで。

ヨットにしょっちゅう乗るならば、ほっといてもいろいろあります。計画なんかしなくても、勝手に向こうの方から、いろんな事がやってくる。それを、ちょっとそこまで気分で、味わいにいく。それだけでも十分に面白いのではないかな〜。そこで大事な事は気軽さですね、やっぱり。

沈黙さえ守れば、いろんな変化が向こうからやってくる。

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