第二十四話 ボートデザイン 

インターネットにUS Sailingというホームページがあります。そこには、ヨットの安定性についての記事がありましたので、ちょいと拝借。

スタビリティーとは、強風や高い波の時に耐えられる能力を指します。また、スタビリティーの消失角は起き上がろうとする力が失われる時のヒール角度を示します。小さなヨットならば、強風によって転覆させられる事もありますが、大きくなると強風では90度ぐらいにまで傾く事はあっても、転覆はしません。しかし、それに加えて、波が高くなりますと、大きなヨットでも転覆する事があります。

大きなうねりの波の場合、どんなに大きなうねりであっても、転覆する事はありません。しかし、波が砕けてくると話は違います。これらの波は70度ぐらいの坂になり、ボートより高い波が長くなった時、ボートはその波の上に行く事ができなくなります。極端に高い波がバウやスターンにかかると、ひっくり返る事もある。もし、横っ腹を波が打つと、もっと簡単に転覆してしまいます。波が高い時、ボートの全長が長ければ長い程、安全なのです。

スタビリティーは、波について言えば、砕ける波が真横から当たる時に、耐えられる能力の事ですが、幅の広いボートの方が、狭いボートよりも安定性が低いのです。でも、幅の広いヨットの方が、風に対してはヒールはしにくく、キャビンも広く取る事ができます。また、ヨットの形の違いにおいて、このスタビリティーを高めるということはあまり無いと報告されています。

横波をくらう時、そのヨットの全長の55%の高さの波までは、何とか転覆を避けられるとされています。しかしながら、幅の広いヨットの場合は全長の35%程度で転覆する事があります。実験された全てのヨットが転覆していますが、どんなに安定性が高くとも、全長の55%の高さの波では転覆を避けられませんでした。

40フィートのヨットで例を示しますと、22フィートの高さの横波を受けると、転覆してしまいます。但し、波だけの時は、極めて安定性の高いヨットの場合、プラス8フィートぐらいまでの余裕を持つ事もありますが、22フィートの高い波に加えて突風という場合、どんなに安定性が高かろうが、横波を受ければ転覆します。

安定性があまり関係無いように思えますが、一旦転覆しますと、重心が低い安定性の高いヨットの方が起き上がる能力は高くなります。例えば、ロングキールとか、より重いバラストを持つヨットとかです。

大きくヒールして、起き上がろうとする力が無くなる消失角はディンギーで80度ぐらい、囲まれた海とか湖とかでなら、少なくとも100度、外洋なら最低120度の消失角が必要とされます。もし、140度以下の消失角の場合、一旦転覆すると、起き上がらなくなる場合もあります。

これらを見てみますと、外洋に出る場合、全長は長ければ長い程良いし、幅は広いよりも狭い方が良い事になります。そして、万一転覆したらという事を考えると、消失角は120度以上、できれば140度以上という事になります。

これらの記述で解る事は、安定性(スタビリティー)というのは二種類あり、波に対する安定性と、風に対する安定性があるという事になります。波に対する安定性は、上記の如くですが、沿岸部では、こういう高い波は発生しにくいので、どちらかというと風に対する安定性が重要になる。

幅が広いのは風に対する安定性が高く、狭い方が低い。しかし、風が弱い時、ヨットは真っ直ぐ立っているより、ある程度ヒールさせた方が良く、ならば、狭い幅の方がヒールします。でも、風が強くなったら、ヒール角度を抑えなければなりませんので、バラストが重く、重心が低いヨットの方がセーリングには良いようです。重いバラスト(高いバラスト比)の場合、初期ヒールはバラストの重さがあまり関係有りませんが、もっとヒールしてきますと、バラストの重さが効果を発揮してきます。

セーリングにおいて、どんなヨットが良いかという疑問がありますが、単純に良いという疑問には答えられません。スピードもあれば、乗り心地もありますし。でも、スピードという点で言えば、これもたくさんのクルーを乗せるかショートハンドによっても異なると思いますが、幅が狭くて、重心が低いヨットというのは、シングルとかには良いと思います。クルーがたくさん居れば、幅が広いとクルーの体重移動が効果を発揮します。そして、船底形状は鋭角なら、乗り心地が良くなるし、フラットならプレーニングしやすくなる。

最近のレーサークルーザーですが、幅が狭くなってきたのはクルーが少なくなったせいか?船底形状はかなりフラットです。これはプレーニング狙い?

外洋艇か沿岸用かは、頑丈なだけでは無く、こういう安定性も考慮しなければならないわけですね。外洋はより安全に、沿岸は快走する為に。

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