第十二話 シートプラスワン

ジブシートとメインシートを使ってセーリングする事ができますが、それにもう1個操作を加えていきます。それで、少しレベルの上がった操作になります。

セールコントロールという事を見ますと、セールの角度と形状になるわけですが、そのうちのセール形状は、ドラフトの深さと位置をどう調整するかとリーチのテンションを高めたり、弱めたりする事でおこるツイスト量をどう調整するかという事になります。このふたつを分けて考えると解りやすいと思います。

セールの角度というのは、風向に対してどういう角度で走るかによって決まってきます。風向対ヨットの走る角度ですから、ウィンデックスを見ればすぐにどのぐらいの角度で走っているかがわかります。基本的には、風向と針路の中間位置ぐらいのセール角度になります。これは比較的解りやすいと思います。

セール形状というのは風速に対してドラフトをどの程度の深さにするか。そして、セールは常に多少なりとも上部がツイストして、下部よりも少し開いた状態になります。これは上下の風速の違いによりますが、それだけでは無く、上部をもっとひねって(ツイスト)させて、上部から風を逃がす事もできます。

ドラフトの深さはバックステーアジャスターやアウトホールを使って調整し、ドラフトの前後位置はハリヤードやカニンガムで調整します。そしてツイストというのは、セールのリーチにかかるテンションを上げたり下げたりしてやります。ブームが船体中央にある時、メインシートを引きますと、ブームが下に下がります。ということはリーチにテンションがかかります。するとリーチはカーブせずに真っ直ぐになっていきます。という事はセール上部が開かずに、ツイストせずに閉じるという事になります。逆にリーチを緩めると、つまりシートを出すと、リーチのテンションが緩みます。するとセールのリーチ部はカーブを描き、上部は開いていきます。この開き具合を状況に応じて調整しようとう事になります。

リーチテンションを調整するもうひとつの艤装はブームバングです。これはセールの左右の角度に無関係で、リーチのテンションを上げたり、下げたりする事ができます。

メインシートだけの操作で全てを走るのでは無く、時に応じて、トラベラーでブームを引き上げたり、下げたりしますと、リーチテンションに変化を与えずに、角度だけを変える事ができます。もっとシートを出した場合は、バングを引いておけば、ブームが上に上がる事はありませんので、メインシートを出して角度のみを変える事ができます。それでリーチのテンションを変えたい時は、バングの調整をすれば良いという事になります。理屈は簡単です。

ジブについては、ブームがありませんから、メインセールのようにはいきません。調整はジェノアトラックのリードブロックの前後移動によって行われます。リードブロックを前にやればリーチにテンションがかかり、フットは緩む。緩むからセールが大きくカーブしていきます。逆に、リードブロックを下げますと、フットにテンションがかかり、リーチは緩む。緩むと上部がツイストします。もっと下げるともっとツイストします。すると風が逃げていきます。
強風のクローズ、上部を大きくツイストさせて風を逃がし、セールの下部で走るという事ができる。

ジブセールは本来は風の強さに合わせてセールを変えるものです。風が弱い時は薄い生地を使って、軽くします。そして大きなカーブを描くようにつくられています。強風の時は厚い生地を使い、また、セールに強い風が当たりますから、その影響でサギングが出ます。これはフィアステーがセールに当たる風の力で、大きくカーブする事です。そこで、こういう強風用のセールはサギングをする事を見越して、サギングした時にセールがフラットになるようにデザインされています。サギングというのが常にあってはいけないものでは無いという事です。

しかしながら、通常のセーリングにおいてはセールチェンジなんかしません。今時はファーリングですから1枚のセールで軽風から強風まで使います。そのセールがどんなデザインが成されているかによるわけですが、それはセールのカーブを見ての判断という事になりますね。

サギングを取りたい場合、バックステーアジャスターを引けば、フォアステーにテンションがかかり、サギングを減少させる事ができます。また、波が悪い時などに、波に叩かれてマストが振動する場合があります。そういう時もバックステーアジャスターを引いてテンションを高め、マストを安定させたりもします。

これらの組み合わせで、セールの形状を整え、そしてそれを適切な角度に設置するという事になります。注意すべきは、角度を調整する時、一緒にセール形状も変化しないか?シートを出せば形状も変わるので、変わった形状を元に戻すという事も考慮しなければなりません。

ジブセールというのいは、クローズには良いのですが、だんだん角度を落としていきますと、セールがきれいに展開できなくなります。ある程度強い風の場合ですとアビーム程度ぐらいは使えますが、風が弱い時はセールの重みもありますし、殆ど使い物にならない事もあります。セールを開いた時、リードブロックの位置も外側に出せれば良いのですが、そうはなっていません。それにメインセールのようなブームも無ければ、バングも無い。そこで登場するのが、ジェネカーですね。

ダウンウィンドは後ろからの風になりますから、見かけの風が弱まります。軽風になるわけですね。それで軽い生地のセールの方が良いわけです。シートも軽くする為に、スナップシャックルとか使わない方が良い。その分重くなりますから、風が弱い時にその重みで開けないこともある。

最近はジェネカーをファーリングにして、しかもセールの形がでっかいジェノアのような形で、スピン生地をつかってあるセールなんかもたまに見かけます。それですと、かなり上りにも使えるでしょうね。ジェネカーはいろんな形で造る事ができます。

1本のシート、プラスワン又はツーで、かなりのコントロールができるようになりますので、是非、少しづつ、いろんな場面で応用してみてください。最初は複雑感もあるかもしれませんが、すぐに慣れて、どおってことは無くなります。本当の難しさは、どの場面でどの程度の調整量にするかという事ですね。これは永遠のテーマかと思います。

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