第二十九話 ウィンチ無し

アレリオン28とかハーバー25とか、ウィンチは一応、セールを上げる為には設置されていますが、一旦セールを上げましたら、その後、殆どウィンチを使う事がありません。

このサイズでも、一般的な艇では、メインシートがキャビン天井の上とか、通常のジェノアセールとかを使う場合はウィンチを使いますが、アレリオンやハーバーは、このどちらのヨットも、メインシートは後方でテークルを組んでいますし、ジブはセルフタッキングでセールが小さいので、セール展開後に、ウィンチを使う事は殆ど無いと言って良いと思います。

ウィンチを使わないで良いとなりますと、舵を持ったまま、シートを出したり引いたりした時の操作が非常に楽になります。それに感触的にも良い感じです。それに、メインセールにストロングトラックを設置して、スライダーの摩擦を極力低くできれば、メインセールを上げるにもウィンチは不要になるでしょう。手でマストトップまでセールを上げる事ができる。そして、カニンガムがありますから、下から引いてテンションをかければ、その方が力は要りません。

ウィンチは力を軽減できる非常に便利な装置なのですが、もし、ウィンチを使わないでも簡単に操作ができるのなら、その方がもっと楽ですね。その方が面白い。

それで、モーリスヨットの新しいモデル、M29は最初からウィンチが一切ありません。


ウィンチ無しのセーリングというのも、なかなか楽しいです。ただ、大きなヨットには無理ですが。
このサイズのヨットの面白さも、そういうところも一役買っているのではないかなと思います。

ストロングトラック

写真はメインセールのグルーブに黒いプラスティック製のトラックを差し込んで、その黒いトラックに新しいグルーブがありますから、それを使います。スライダーも専用のスライダーを使います。
これは驚く程、スムースです。メインを降ろす時なんか、ハリヤードを放てば、ギロチンのように落ちてきます。それだけスムースですから、上げる時も非常に楽になりますね。アレリオン28も、そのままで殆どウィンチ無しでもいけますが、ストロングトラックにしますと、もっと楽。

それで、後は、ウィンチ無しのセーリングが楽しめます。ストロングトラックはお奨めですね。セール上げからセーリングまで全部ウィンチ無し。実に面白い。ウィンチを使う手間というのは、面倒に感じる事もありますよね。シートを片手で引いて、カムクリートに止める。カムクリートからシートを抜いて、リリースして止めるこの方が簡単ですし、力加減も良く解る。ただ、どのヨットでもというわけには行きませんが。

キャビントップウィンチを使って、メインシートを操作するというのが、一般的なクルージング艇のやり方ですが、ステアリングホィール仕様艇では遠いし、それにストッパーをはずして、ウィンチで巻いてという事になり、どうしても片手でひょいとは行きません。両手が要る。という事はステアリングから離れなければなりません。

  一般クルージング艇はこうなっています。
  ブーム中央あたりにメインシートをとって、
  テークルを組んでいますが、ウィンチ無し
  では、力が弱い。従って、ウィンチを使って
  操作します。かかる力も強いと、カムクリート
  では無く、ストッパーが必要になります。

  ブームエンドからメインシートを取れば、それ
  だけで、かかる力は少なくてすみます。
  





一方、コクピットにシートがあって、ブロックでテークルが組んであるタイプは、舵を握ったまま片手でひょい。セーリングしている時、この感じは随分違います。

 ブームエンドからメインシートを取った場合
 ウィンチ無しでも、片手で引く事ができる。













大きなジェノアを使う場合はウィンチ無しというわけには行きません。強風、風下ウィンチを扱うのは、シングルの時は面倒です。それにやっぱり片手でひょいとは行きません。ウィンチ無しというのは、楽で、結構面白い。それができるなら。

クルージング艇というのは、コクピットにトラックなんかがあると邪魔という考え方で、キャビントップウィンチにリードするのが一般的です。それはそれで仕方無いとは思いますが。セーリングを主体と考えると、やはりブーム後方から引きたいものです。という事で、メインシートトラックがどこにあるかで、そのヨットがクルージング主体なのか、セーリング主体なのかを見る事ができます。  

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