第十二話 ゲレンデセーリング 

日本には海がたくさんあるにも拘わらず、何故、ヨット人口は少ないか?気がつきました。もちろんヨットの価格もあるでしょうし、保管料等もあるが、その他に、スキーのような安心して遊べるゲレンデが無いからでは無いでしょうか?誰もが、気軽にセーリングが楽しめるセーリング場です。整えられた環境で、安全に楽しめるフィールド、これがセーリングには無い。だから、限られた人しかやってこない。

スキー場は、環境が人工的に整えられています。楽しめるし、安全だし、パトロールしている人達も居ます。それにアフタースキーも楽しめるようになってます。危険区域には立ち入り禁止とまで看板がある。でも、セーリングときたら、自然のまま、ちょっと桟橋から離れて出たら、もうそこは自然のまま。誰も守ってはくれません。例え、100mしか離れていなくても、風がビュービューです。波もある。それは自然のまま、コース以外のスキーと同じ。雪崩があるかもしれない。木々が立ちこめ、それらをぬって走る事になります。どこかに危険もある。ですから、そんなスキーをする人は限られてくる。それと同じ、セーリングはどこ走っても、ワイルドな自然の中、それじゃあ、普通は大勢やってくるようにはならないのではないか?でも、仕方無い。それがヨットの有り方であります。

という事は、ヨットというのは、仮にお金があるにしても、ちょいとする気にはなれないのかもしれません。良い時は本当に良い、でも時化た時はすごい。全部、自己責任で運営しなければなりません。我々は日常的に管理されている中で遊ぶ事の方が多い。その方が楽でありますから、それに慣れています。でも、全て自分の判断で運営されるヨットというのは、あまり一般的な遊びでは無い。そういう意味では、現在、ヨットされている方々は、ワイルドな方々になりますね。進むべきか、引き返すべきか、全部自己判断。これはまるで、本格的な山登りとも共通します。

デイセーリングにおいても、目の前の海域といえども、様相は同じであります。ただ、遠くない分、多少の気軽さはあるとは思いますが、でも、引き返そうと思っても、1時間や2時間は我慢しなければなりません。

ヨットは遊びとは言いながら、楽しい事ばかりじゃ無い。辛い事もある。一般的な遊びとしては、その遊びの中に辛い事もあるというのが受け入れがたいかもしれません。いつも、安全で、快適さを求めます。という事はヨットは一般的では無いことになります。

自然の山の中を滑るスキーや、本格的な山登り、そういうものに共通しているところがあります。自己管理、自己責任、自己運営、それらができる人は、そう多くは無いのかもしれません。それがハードルの高さかもしれません。でも、こればかりは、どうしようも無い。デイセーリングにおいても、ゲレンデセーリングとは行きません。

自分の身は自分で守れと言われた時、これはもう、一般的レジャーとは言いがたい。一種の冒険でもあります。レジャーという意識で対応しますと、こんなはずでは無かったと思う事になると思います。でも、それだけに、実際にヨットやる人にとっては、ゲレンデスキーをやる時とは違う面白さを味わう事もできる。何気なくしている判断も、自由に、自分の判断です。誰かが指示するわけでは無い。そこが大人の遊びです。良く言えば、自主性を重んじる遊びです。危険も辛さもある遊びです。そんな遊びが一般化するはずが無い。多くの人達は管理されていなければ遊べないのですから。管理は嫌なのですが、実は楽なのです。管理がまずければ、管理している側に文句が言える。
そうでなければ、自分に問うしかない。スキー場でも、一部、立ち入り禁止区域に入って滑る人達が居ます。ちょっと自信ができて、その管理破りが面白いのでしょう。でも、本格的に自分で判断して、全く管理されていない山に入って、自己判断で滑るのとは大違い。セーリングには管理されたフィールドは近場でも無いわけですから、自然の中を滑るスキーヤーと同じですね。

誰でもがセーリングに入ってこれるわけでは無い。自己管理と自己判断、自己責任でできる人という事になります。そんな事は考えた事無いかもしれませんが、意識しなくても、みなさんそうしている事になります。そんなセーリングが一般化するとは思えない。でも、せめて、デイセーリングという範疇では、ワイルドさも楽しみながら、自己責任も管理しながら、もっと増えても良いとは思います。最も人口の多い分野になれるはずではないかと思います。

デイセーリングのフィールドは、初心者はもちろん、超ベテランにとっても、セーリングの妙を味わう事ができるフィールドです。ですから、デイセーリングを唱えます。外洋へ行く人達は、誰かが唱えなくてもできる人達だろうと思います。言い方は悪いですが、ほっといても行く人は行く。その点、デイセーリングは、誰もができるフィールド、最初のフィールドでありますが、そのせいで軽んじられる傾向もあるかもしれません。しかし、実に奥深いフィールドでもあります。同じフィールドであっても、乗る側の意識によって、どうにでもなるフィールドです。浅くも深くもなるフィールドです。そこが、それぞれのレベルで遊べる所以かと思います。初心者がセーリングの基礎を学べるフィールドであり、ベテランがセーリングの妙を味わう事ができるフィールドであります。ですから、デイセーリングがもっと流行るべきだと思う次第です。誰でもデイセーリングを楽しんで頂きたいと思います。誰でも、近場でワイルドな自然を遊ぶ事ができます。でも、やっぱり自己責任という大人の遊びであります。ゲレンデセーリングとは違う。近くの山にピクニック気分で行けるような、本格的な登山のような、その両方がデイセーリングにはある。

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