第四十四話 自分のシンプル

誰でも最初はいろんな事を考えて、あれも要る、これもあった方が良い。万一の為に、これも。となるようです。確かに、あれば役に立つものばかり、実際使って、役立ったという事もあります。

でも、どんどん乗り進むと、自分のパターンが出来てきます。いわゆる自分のスタイルです。そして、それが進めば進むほどに、不要と思う物がたくさん出てくる。無くても良い。無い方が良い。そういう事もあります。もちろん、必要な物は絶対欠かせない。でも、無駄が多いことにも気づきます。

つまり、自分の乗り方がわかるからこそ、不要と感じたものは撤去したくなる。そして、自分のスタイルに合う物だけに絞りたくなります。自分のシンプルになるのではないでしょうか?本当はシンプルが一番良い。自分のシンプルです。スタイルが解らないと、そうは行きません。

敢えて、シンプルにするという事とは違います。これで良い。こうが良い。それが自然にシンプルになる。別にシンプルにしようという意識は無いわけで、結果的にシンプルになる。シンプルになると、意外にこれが結構自慢でもあります。何となく、良い気分になる。予算が無いから、何も無いというシンプルさは、ほしいのに無いのでありますが、この場合は不要だからシンプルなのであります。これは大きな違い。何もつけていないんだよ、というちょっと自慢気なわけであります。

でも、そうなりますと、全てがとっても使いやすい。あるものはしょっちゅ使うわけです。使わないものははなっから無い。場合によっては、他人から見るとシンプルには見えないかもしれません。でも、自分にとっては、あるものは全て使うわけで、自分のシンプルなのです。

無くて済むなら無い方が良い、と考える。或いは、代用ができるとか。そういう考え方を持ちますと、ヨットが気軽なものに思えてくる。もっと身近に感じる事ができる。何より、身近なものとして感じられる事が重要だろうと思います。遠い存在だからこそ、何でもたいそうだし、考える事はイベント的だし、日常から離れてしまう。

さて、デイセーラーはシンプルです。でも、水と飲み物、食料はコンビニでも、その日の分を買ってこれる。アイスボックスがあれば、氷と一緒に放り込んでおけば、冷たいまま。冷蔵庫はこうはいきません。スイッチ入れても、冷えるのは帰ってきた時ぐらいか?その間バッテリーも心配だから、エンジン止めれない?デイセーリングだったら、たいした物は不要なのです。でも、セーリングを遊ぶのがデイセーラーですから、セーリング艤装は必要です。その他はあまり必要な物は無い。焦点が絞られています。

クルージングに必要な物は何か?外洋に必要な物は何か?レースに必要な物は何か?セーリングに必要な物は何か?その前に、自分に必要な物は何か?
ヨット経験の無い人にとっては、なかなか解るものでは無い。人に聞いても解らない。経験して、自分で見つけ出すしか方法は無い。

そういう意味でも、基本はデイセーリングにあると思います。まずはデイセーリングを始める。どんどん乗って、経験して、それからどう感じていくかが生み出される。何年か後、ある人はレースに行くかもしれません。また、ある人は外洋に行くかもしれません。でも、最後はまたデイセーリング。旅に出ますと、意識は外に向かう。レースも同様です。でも、デイセーリングは、意識が内に向かう。どんな感じかを意識します。それは、想像以上にバラエティーに富んでいる事がわかる。だから面白い。自分の面白さが解る。

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