第二十六話 シングルでも可能?

ショートハンド操作のトレンドは、昨今では常識的でもあります。大きなヨットであっても、電動や油圧の機器を使って、簡単に操作が可能です。50フィートのヨットのメインを上げるのは大変ですが、電動か油圧ならボタンひとつ。そういう時代です。ですから、こういうヨットなら、二人居れば、一応の事はできる。昨今では、60フィートをシングルで乗る人も居るくらいです。

しかしながら、シングルが理屈として可能であり、実際、電動とか油圧とかしないでも、オートパイロットさえあれば、舵から離れる事ができますので、そういう理屈から言いますと、シングルでも可能になってしまいます。しかし、ここから、あそこへの移動というのが主たる目的であるなら、それも良いかもしれませんが、もし、セーリングを堪能しようと思うのであれば、事情は違ってきます。

セールを扱う度に、舵を離れてウィンチ操作を行う。ウィンチのポジションによっては、コクピットの前の方まで行かなければなりません。風はどんどん変わる、それにいちいち舵を離れる必要があるとしたら、それこそ面倒なので、舵はオートパイロットに任せってきりになるかもしれません。それで面白いのかどうかです。移動目的ならOKでしょうが、セーリング遊びには物足りないのでは無いかと思います。

可能なら、舵を持ったまま、殆どの操作ができるというのが理想的ではないかと思います。シングルハンドが可能ですとは、どんなヨットでも言えるかもしれません。でも、セーリングをシングルで遊べるというのは、また別な話ではないでしょうか?

そういう意味では、デイセーラーが、こういうシングルを意識してデザインされています。ちょっと気軽にという事を考えましたら、その瞬間にクルーがそこに居るとは限りません。ひとりでも気軽に出せる。或いは、ゲストが全くの素人かもしれません。それなら、シングルと同じです。それで、セーリングが充分に堪能できるというのが、その面白さです。

デイセーラーには2種類あって、ジブブームを擁したアレリオンとハーバーヨット、これらには、ジェネカーを必要としません。セーバースピリットやモーリスはダウンウィンドはジェネカーが前提にあります。そこで、ジェネカー帆走の方がエキサイティングな走りをする事は言うまでもありませんが、シングルで、それをやる場合、当社としては、ジェネカーファーリングをお奨めしていますが、同じシングルでも、やり方が少し違ってきます。

シングルセーリングを可能にするもの、本当はそう多くは無いのではないかと思います。要は、シングルだろうが、ダブルだろうが、移動目的とセーリング目的では、仕様が異なるという事になると思います。シングルハンドという意味は、シングルで帆走が充分楽しめるという意味だと捉えています。そういう意味では、30フィート前後くらいとか、そういう話では無く、どういうデザインをしているかという事によるのではないでしょうか?

デッキの装備の配置だけでは無く、シングルにとってよりやり易いのは、スタビリティーもそうでしょう。俗に言う腰の強さは、シングルにとっては大いなる助けになります。セールを展開したら、後は、コクピットに居て、舵操作をしながら、殆どは片手でセール操作もできる。これを高いスタビリテーが支えます。

これ以上のフィーリングは、ハルの剛性とか、形状の水の流れ、全体のバランスが大いなるフィーリングを左右する。そこを楽しむのが、セーリングかと思う次第です。オートパイロット任せでは、このフィーリングは充分には伝わってこないのではないでしょうか?

つまり、シングルハンドでもクルージングするか、セーリングするかによって、シングルの内容は違うと思う次第です。

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